シーズン後半の3試合について「全部5-0で勝つと言っておいてできなかったのは、僕の力のなさです」と島岡監督は自嘲気味に笑うが、今シーズンの南葛SCを振り返る上で、特筆すべきはその得点力だ。公式戦全12試合を戦い、全試合で得点をマーク。11試合で先制点を記録し、その全ては前半に挙げられたものだ。決めたい時に決め、欲しい時に奪い、シーズンを通して試合を優位に進める時間が多かったことを物語っている。
もともと能力の高い選手がそろい、得点力は高かったかもしれない。しかし、いかにこの能力を具体的な結果に結びつけたのか。
島岡監督は「得点することに関しては、個人の持っている能力など変えられない根本的な部分が影響している」と言いつつ、「それでもどこに打つ、いつ打つという頭へのアプローチをすることはできなくはない」と解説してくれた。
「例えばシュートシーンでDFと相対しているとします。この時、守備側のGKは味方のDFがかぶってボールが見えない状態にある。対して、攻撃側のプレーヤーはDFの立っていないところにシュートコースが見える。これだけでも、ボールを持っている攻撃側の方が優位に立っているんです。そこで何を見るか、は考え方で変わってくる。本当にシュートを“決めよう”と考えれば、あるはずのシュートコースをまず見つけようとする。シュートを“撃とう”と考えると目の前のDFの身体の向きや体勢を見ようとする。シュートコースが本当になければ、ボールを運んで作り出していいのですが、シュートコースがあるのに運ぶのは違う。コースはあるのに焦って時間を要しているだけになっている。GKからは死角になっている上にコースもあるなら、無駄に運ぶ必要はありませんよね」
シュートチャンスではDFがシュートコースを教えてくれる事になり、GKからすると、ボールを隠してくれる存在にもなる。それが「シュートを決める意識を高める」ことだと、練習時からコーンを立てるなどして教えてきた。これはほんの一例だが、こういった具体的に「考える」トレーニングが直接的にしろ間接的にしろ、結果に影響を与えたのは確かだろう。
南葛SCはブロック1位を決めた後、もう一方のブロック1位のアストラ倶楽部との優勝決定戦もPK戦で勝利。試合終盤のパワープレーとPK戦というノックアウト方式に向けたシミュレーションも行なえたおまけつきで、東京都社会人サッカーリーグ1部を優勝。東京都1位として関東リーグ昇格をかけた関東社会人サッカー大会へ進むこととなった。
※後編に続く。次回は12月19日に掲載予定
取材・文●伊藤 亮