「チャレンジしながらできることが増えてきた。でもそれで満足するのではなく、もうひとつできることを増やす、もう一段階精度を高めるために考えていこうと言っています。そうやって段階を踏んでいこうと」
仲間との関わりの中で、例えばボールスピードを速め、互いの距離を縮め、範囲を限定することで、同じボールを止める、運ぶでも難度はグッと上がる。これを根気強く続けていくことで、より実戦で通用する正確性を獲得していく。
「技術が上がるほどやれることが増えるし、やれることが増えれば自分の楽しさが試せる部分が増えてくる。何歳でも意識次第で上手くなれるんだという実感を得てほしい。そうすればワクワクしてくるじゃないですか。結局、自分を高めようとし続けるサッカーをやりたいだろうし、見たいでしょう。また、そういう取り組みをする自分もワクワクしたいですし」
確かにそのとおり。一方で、基本の技術を突き詰めるには条件がある。選手個々が本気で取り組み、強い意識で続けていく、という条件が。
だが、この難しい条件も2020年の南葛SCは満たしているようだ。東キャプテンが証言する。
「昨シーズンはみんなが苦しんだ年でした。都リーグは難しいとみんなが肌で感じた。その苦しみ、悔しさを払拭しようと努力している点で、空気感が変わっています。個々の練習の参加率も格段によくなり、関東リーグへ昇格しようという意欲が凄いんです」
もしかしたら、島岡監督は選手たちが昨シーズン味わった悔しさを前提にチーム作りの方法論を考えたのかもしれない、とさえ感じられた。それほど南葛SCに必要なものにピンポイントにアプローチし、そこに選手たちの向上心を掛け合わせている。
トレーニング面から垣間見えた南葛SCが2020年に掲げる「ワクワクするサッカー」の正体。それは技術の“正確さ”を前提とするものだった。次回は実際の公式戦、現在行なわれている東京カップでの戦いぶりから別の角度で、標榜するサッカーの正体を探ってみる。
※第2回に続く。次回は2月28日に掲載予定です。
取材・文●伊藤 亮
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