サッキほど効率性に執着せず、カペッロほど現実主義ではない。
ピルロの中盤最後尾での起用は、あくまでも攻撃的な布陣や戦い方を望むファンやマスコミ、シルビオ・ベルルスコーニ会長を一時的に満足させるためのもののはずだったが、ここで事態を一変させる出来事が起こる。
移籍市場の最終日、フロントがアレッサンドロ・ネスタをラツィオから獲得したことを発表したのだ。イタリア最高のCBが最終ラインに控え、さらに守備力のあるセードルフ、運動量抜群のジェンナーロ・ガットゥーゾを併用することで、ピルロを中盤の底に置くことに何ら障害はなくなった。
ちなみにそれ以前、ネスタ獲得を執拗にフロントに訴えていたのは、FWのインザーギである。
そしてこのシーズン、ミランはファンタジー溢れるサッカーで勝利を重ね、9年ぶりにチャンピオンズ・リーグを制した。そして以降、ミランは多くのスター選手を迎えながら、新たな黄金時代を長く謳歌することとなった。
06-07シーズンにも欧州制覇を果たしたアンチェロッティは、09年からは国外に飛び出し、チェルシー、パリ・サンジェルマン、そして13-14シーズンからはR・マドリーを率いて、このたびの大偉業を成し遂げたのである。
その過程において、アンチェロッティは「守備が全ての基礎」という基本は守りながらも、柔軟性を持って選手起用、システム採用を行なってきた。来る者を拒まず(去る者も追わない)、持ち駒を活かしながら、最適なシステムで攻守をバランス良く機能させている。
R・マドリーの今シーズンのレギュラー選手を見ると、中盤より前は全て、本来は攻撃の選手である。にもかかわらず、全選手のハードワークと的確なマークの受け渡しなどで守備の安定を保ち続けている。
ミランのインザーギ監督は、理想のチームとしてR・マドリーを挙げ、「4-3-3で爆発的な攻撃を見せ、守備では瞬時に4-3-2-1や4-4-2に切り替わる」と理由を語っているが、かつての恩師はそれを短期間でスター集団に植え付けたのである。
そのためには、スーパースターたちを納得させる必要があるが、ここではその性格が役立っている。どの国でも、選手からは「兄か、父親のようだ」と思わせる穏やかな人柄で、選手のモチベーションを上げるのだ。
指導者としてはミランで共に過ごしたアリーゴ・サッキやファビオ・カペッロの影響を受けているようだが、サッキほど効率性ばかりを重視せず、ファビオ・カペッロほど冷徹な現実主義者ではない(ふたりとも選手との対立は多かった)。
ミラン時代、アドリアーノ・ガッリアーニ副会長から「我々が最も必要とするタイプの監督」と称賛され、選手からは「大切にしてくれる」と慕われたが、それはその後に率いたどのクラブでも変わっていないようだ。
派手さを好むフロント、まばゆいばかりの輝きを放つスター選手たちを、一歩下がった位置から的確にコントロールし、次々にビッグタイトルをもたらす智将。歴史においても、非常に稀なタイプの指揮官は、今後もその洞察力、判断力、そして柔軟性で多くの実績を積んでいくことだろう。
【写真】レアル・マドリーの10度の欧州制覇と3度の決勝敗退
移籍市場の最終日、フロントがアレッサンドロ・ネスタをラツィオから獲得したことを発表したのだ。イタリア最高のCBが最終ラインに控え、さらに守備力のあるセードルフ、運動量抜群のジェンナーロ・ガットゥーゾを併用することで、ピルロを中盤の底に置くことに何ら障害はなくなった。
ちなみにそれ以前、ネスタ獲得を執拗にフロントに訴えていたのは、FWのインザーギである。
そしてこのシーズン、ミランはファンタジー溢れるサッカーで勝利を重ね、9年ぶりにチャンピオンズ・リーグを制した。そして以降、ミランは多くのスター選手を迎えながら、新たな黄金時代を長く謳歌することとなった。
06-07シーズンにも欧州制覇を果たしたアンチェロッティは、09年からは国外に飛び出し、チェルシー、パリ・サンジェルマン、そして13-14シーズンからはR・マドリーを率いて、このたびの大偉業を成し遂げたのである。
その過程において、アンチェロッティは「守備が全ての基礎」という基本は守りながらも、柔軟性を持って選手起用、システム採用を行なってきた。来る者を拒まず(去る者も追わない)、持ち駒を活かしながら、最適なシステムで攻守をバランス良く機能させている。
R・マドリーの今シーズンのレギュラー選手を見ると、中盤より前は全て、本来は攻撃の選手である。にもかかわらず、全選手のハードワークと的確なマークの受け渡しなどで守備の安定を保ち続けている。
ミランのインザーギ監督は、理想のチームとしてR・マドリーを挙げ、「4-3-3で爆発的な攻撃を見せ、守備では瞬時に4-3-2-1や4-4-2に切り替わる」と理由を語っているが、かつての恩師はそれを短期間でスター集団に植え付けたのである。
そのためには、スーパースターたちを納得させる必要があるが、ここではその性格が役立っている。どの国でも、選手からは「兄か、父親のようだ」と思わせる穏やかな人柄で、選手のモチベーションを上げるのだ。
指導者としてはミランで共に過ごしたアリーゴ・サッキやファビオ・カペッロの影響を受けているようだが、サッキほど効率性ばかりを重視せず、ファビオ・カペッロほど冷徹な現実主義者ではない(ふたりとも選手との対立は多かった)。
ミラン時代、アドリアーノ・ガッリアーニ副会長から「我々が最も必要とするタイプの監督」と称賛され、選手からは「大切にしてくれる」と慕われたが、それはその後に率いたどのクラブでも変わっていないようだ。
派手さを好むフロント、まばゆいばかりの輝きを放つスター選手たちを、一歩下がった位置から的確にコントロールし、次々にビッグタイトルをもたらす智将。歴史においても、非常に稀なタイプの指揮官は、今後もその洞察力、判断力、そして柔軟性で多くの実績を積んでいくことだろう。
【写真】レアル・マドリーの10度の欧州制覇と3度の決勝敗退