【現地発】惨敗に終わった本田圭佑の"Aリーグ最終戦"。史上最大の敗北の現場で何が起きたのか

カテゴリ:海外日本人

植松久隆

2019年05月13日

本田は、ゆっくりとサポーターのほうへと向かった

 この日の本田は、対処療法的にシステムを変えてくるベンチの戦術に併せて、ポジションが数度変わるも一定以上の働きは見せた。逆に言えば、本田にボールが渡った時くらいにしか何かが起きそうな気配がなかったのが、この試合でのビクトリーだった。他の選手は、ファイナル特有の雰囲気とはいえ、1万4000人の相手サポーターの醸し出す雰囲気に呑まれてしまったのか、どうにも動きが悪かった。特に中盤の底を任されたMFラウル・バエナは、ボールを持つと慌てて中途半端なパスで最終ラインに戻す事の繰り返しで、とにかく危なっかしくて見ていられなかった。
 
 試合後のマスカット監督は、その言から敗因を探り出そうとする名うての記者の問いかけにも「弁明はしない」と繰り返した。茫然自失の表情には精気がなく、いつもの熱いイメージとは異なり淡々と語る様子が、よりそのショックの大きさを映し出していた。とにかく、この日のビクトリーのパフォーマンスは、今までには無いレベルの出来だった。その中で、本田ひとりが雰囲気に呑まれずにパフォーマンスできていたとしても、彼が単独でできることは限られていた。
 
「デモリッション(破壊)だね、こりゃ…」、前半のアディショナルタイムで3点目が入って、前半終了の笛が鳴った直後に筆者の席の後方に座っていた男が呟いたのが聞こえた。後半はさらに3点が入り、ようやく、1点を返すのが精一杯だったビクトリー。試合が6-1で終わったその時、僕の少し後ろに座っていたはずの呟きの主はすでに席を立っていた。シドニーFCがビクトリーのグランドファイナルという夢を破壊するというミッションをほぼ完璧な形で完成させるのを見届けて、シドニー・ファンの彼は、試合終了のホイッスルを待たず、混雑を避けて家路を急ぐのを選んだに違いない。

 ピッチで試合終了の笛を聞いた本田は、ゆっくりとバックスタンドに陣取ったサポーターのほうへと重い足取りながら向かった。遠いので良く聞こえなかったが、6-1の惨敗へのブーイングはあまり激しいものではなかったようだ。選手の何人かは、サポーターのすぐ前まで駆け寄り、惨敗の後にもかかわらず顔見知りのサポーターと握手したり、抱擁したりしていた。その時、国際試合や欧州で多くの修羅場を知る本田の胸の内に去来したものは一体なんだったろうか。

 この惨敗が、本田のダウンアンダー(豪州の別称)での最後の姿になってしまうのは残念だ。
 
 22日のACL広島戦、この試合に出てくれば、そこが本田の最後の大きなインパクトを残す機会となる。すでに勝ち抜けを決めた広島、そして、すでに敗退が決まっているビクトリー。両軍にとって「消化試合」であることには代わりはないが、本田が日本のトップレベルを相手に最後の豪州での爪痕を残す機会となるのであれば、それはそれで十分に見届ける価値のある試合になる。
 
 本田のAリーグ最後の公式行事は、13日のAリーグ・アワードの出席となる予定。その会場で、本田圭佑は何を語るのか――こちらも、しっかり現地で見届けてきたい。
 
取材・文●植松久隆(フリーライター)

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