「奇跡」を信じる気持ちがプレーに表れていなかったのは紛れもない事実だ
現地で取材していたからこそ感じたのは、勝負を分けたのがシドニーFCの2点目となった43分のアレックス・ブロスクのビューティフル・ゴールだったということ。開始早々のGKローレンス・トーマスのハンドリングミスでの失点で出鼻を挫かれたビクトリーだったが、その後は押されながらも何とか踏ん張っていた。しかし、そこで、ビクトリーに突きつけられたのが、かつてJリーグの清水でもプレーしたベテランが左足のボレー一閃だった。
この得点は、ただの追加点以上の意味を持った。今季での現役引退をすでに発表、サポーターの信頼と人気を集めるブロスクの大事な試合でのゴールは、シドニーFCファンが埋めたスタジアムのボルテージは一気に上げた。その後、さほどの間を開けずに起きた、シーズンを通してチームのために様々なポジションで献身を続けたリー・ブロクサムのオウンゴールという悲運も重なり、前半終了時で、3-0と引き離されたビクトリーは完全に意気消沈。かなり打ちひしがれた様子で、選手たちはロッカールームへと消えて行った。
当然、ハーフタイムのビクトリーのロッカールームでの様子など、筆者が知る由もない。ここは推測ということになるが、この時点でビクトリーのケビン・マスカット監督に大逆転への「策」はあったのか。また、彼には3点差を跳ね返すようなパフォーマンスを選手から引き出す「術」はあったのだろうか。マスカット監督は、その熱いハートからモチベーターとして優秀なのは衆目の一致するところ。しかし、昨晩の3-0を跳ね返さなければという状況下で、それを可能とする戦術的なアイデアを選手に与えられたのかは、正直、疑問が残る。
この得点は、ただの追加点以上の意味を持った。今季での現役引退をすでに発表、サポーターの信頼と人気を集めるブロスクの大事な試合でのゴールは、シドニーFCファンが埋めたスタジアムのボルテージは一気に上げた。その後、さほどの間を開けずに起きた、シーズンを通してチームのために様々なポジションで献身を続けたリー・ブロクサムのオウンゴールという悲運も重なり、前半終了時で、3-0と引き離されたビクトリーは完全に意気消沈。かなり打ちひしがれた様子で、選手たちはロッカールームへと消えて行った。
当然、ハーフタイムのビクトリーのロッカールームでの様子など、筆者が知る由もない。ここは推測ということになるが、この時点でビクトリーのケビン・マスカット監督に大逆転への「策」はあったのか。また、彼には3点差を跳ね返すようなパフォーマンスを選手から引き出す「術」はあったのだろうか。マスカット監督は、その熱いハートからモチベーターとして優秀なのは衆目の一致するところ。しかし、昨晩の3-0を跳ね返さなければという状況下で、それを可能とする戦術的なアイデアを選手に与えられたのかは、正直、疑問が残る。
後半になっても、キャプテンの一振りで高まった会場の雰囲気とあいまったシドニーFCの猛攻は止まらない。両監督に与えられた交代の手持ちのカードを比較しても、代表の有望株やシーズンでも顕著な働きを見せた選手を控えに並べるシドニーに対して、ビクトリーの持ち駒はどうもインパクトが足りない。この交代カードをどのように切っても、3点差をひっくり返すという結果を導き出すのは、どんな名将であったとしてもかなりの至難の業であったろう。
この試合を通じて、とても気になったのは、ビクトリー選手の全体的な淡々とした様子。前半終了時点で3-0であっても、このところサッカー界では「奇跡」と呼ばれる大逆転劇が続いている。45分残された時点で諦めてしまうのはいささか早過ぎるし、実際、ビクトリーの選手たちが諦めていたとは思わない。しかし、残念ながら、その気持ちがプレーに表れていなかったのは紛れもない事実だ。その結果、後半だけで3-1、最終スコアで6-1というAリーグのファイナル史上最大の敗北が、本田とビクトリーの眼前に突きつけられた。