【黄金世代・復刻版】遠藤保仁メモリアル ~ シドニー五輪秘話「進撃の裏側で」(前編)

カテゴリ:特集

川原崇(サッカーダイジェストWeb編集部)

2017年06月05日

“18人”との距離を縮める作業。

運命の第1戦、日本は高原直泰(17番)のゴールで南アフリカに逆転勝ち。幸先のいいスタートを切った。(C)REUTERS/AFLO

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 迎えたグループリーグ第1戦、対南アフリカ戦。
 
 バックアップメンバーたちは、メインスタンドの片隅に陣取り、試合を観戦することとなった。
 
 これはFIFAが定めたルールであり、控室には入れるがベンチには座れない。日本サポーターに囲まれるような形で、いまやJリーグでも有名な4選手はスタンドから、世紀のオープニングマッチを眺めていた。
 
「あのフェアプレーの旗が出てきて、いつもの入場の音楽が鳴るじゃないっすか。それを上から見てるのが、とにかく悔しくて。自分自身、ベンチにも座れなかったことってホントになかったから、どうしたらいいんだろって感覚だった。

 でもね、見るのとやるのは違うって、よく分かったってのもある。僕は日本が対戦したチームでは南アが一番強烈だったと思うし、フォーチュンのプレーなんか、感動的でさえあったから。同じピッチに立って得る経験はそりゃしたかったけど、上から見てたからこそ冷静に、アイツのホントの凄さを理解できたんでね」
 
 日本は苦しみながらも、クセ者揃いの南アに逆転勝ちを収める。
 
 試合翌日の練習は、出場組が軽く流す程度で、控え組がフルメニューをこなすカリキュラム。バックアップメンバーの4人は、次第に物足りなさを感じていく。現段階で、自分たちが試合に出る可能性は皆無。このままでは帰国してからのコンディションにも、少なからず影響が出てしまう。
 
 4人は早川直樹トレーナーに掛け合ってもらい、トルシエ監督に直談判した。時間外での練習を許してもらおうと。残念ながら受け入れてもらえなかったが、それは彼らの意思表示であり、徐々に開きつつあった“18人”との距離を縮める作業でもあった。
 
「スタッフの人たちには、ホントに感謝してますよ。ああいう立場だったからなおさらありがたみが伝わってきたし、少しでも無駄な時間がないようにと心配りをしてもらったから。なので、筋トレは必死に一生懸命やりました。

 18人のメンバーともまったくいつも通りでしたよ。変に気遣いをしてくる選手もいなかったし、まあ、仲がいいというかなんというか。でももしあそこで誰かが気を遣ってたら、きっとムカついたんだと思う。

 ただね、ボール回しをする練習中なんかは、さすがにちょっとね……。正直、輪の中に入り切れてないなって、どこかで思ってた」

<後編へつづく>
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