「靴下やベルトを売っていたくせに…」ローマを“炎上”させたラツィオMFの人種差別発言

カテゴリ:ワールド

片野道郎

2016年12月11日

さらなる論争は避けられないという「政治的判断」が?

カタルディと揉めたストロートマンに対する処分は、わずか3日で撤回されるという不可解な結末に……。写真:Alberto LINGRIA

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 さすがのルリッチも、翌日には事態の重大さに対応せざるを得なくなり、自身のFacebookで次のようなコメントを発表した。
 
「冷静になってみて、挑発に対して挑発で返してしまったことに気付きました。私も人種的偏見が悲劇をもたらした国からやってきた人間です(ルリッチはボスニア・ヘルツェゴビナで生まれ、幼少期に戦火を逃れるためにスイスに移住)。それだけに、ダービー直後の興奮に駆られて不適切な発言をしてしまったことを残念に思っています」
 
 週末の試合を受けて、火曜日に行われたリーグの懲罰委員会では、しかしルリッチに対しては何の処分も下されなかった。
 
 一方のローマでは、先制ゴールを挙げてピッチ中央に戻る途中で、ピッチサイドから何らかの挑発をしたラツィオの控え選手ダニーロ・カタルディに手にしていたペットボトルの水をかけ、そのカタルディともみ合いになったケビン・ストロートマンに、2試合の出場停止という処分が下された。
 
 処分の対象になった振る舞いは、水をかけたことではなく、それに反応したカタルディが後ろからユニホームの襟首を掴んだのに対し、殴られてもいないのに頭を抱えてピッチに倒れ込んだシミュレーション行為だというのだからよく分からない……。と思っていたら、金曜日にローマの控訴を受けた懲罰委員会が処分を撤回するという、さらによく分からない展開になっている。
 
 ローマはこれからミラン(12月12日)、ユベントス(12月18日)との上位対決を控えているだけに、この処分に対しては、「どうしてストロートマンが出場停止になったのに、ルリッチには何の処分も下らないのか」という反論も持ち上がっていた。
 
 ローマの主力中の主力であるストロートマンが、不透明な理由による処分でビッグマッチ2連戦に出場できないとなると、さらなる論争は避けられないという「政治的判断」があったのかもしれない——というのは深読みに過ぎるだろうか。
 
 いずれにしてもルリッチに関しては、ピッチ上での出来事ではなく試合後のインタビュー発言が対象ゆえ、リーグは通常の懲罰委員会ではなく、TV局から録画を取り寄せたうえでスポーツ裁判を行って60日以内に処分を決めるというプロセスを取っており、その結論が出るのは年明けになる可能性が高い。
 
 ルール通りの運用とはいえ、これでこの問題をめぐる論争もまた、クリスマスをまたいで年明けまで延々と続き、ロマニスタとラツィアーレの日常に花を添えることになりそうだ。
 
文:片野道郎
 
【著者プロフィール】
1962年生まれ、宮城県仙台市出身。1995年からイタリア北部のアレッサンドリアに在住し、翻訳家兼ジャーナリストとして精力的に活動中だ。カルチョを文化として捉え、その営みを巡ってのフィールドワークを継続発展させている。『ワールドサッカーダイジェスト』誌では現役監督とのコラボレーションによる戦術解説や選手分析が好評を博す。
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