「2年前には靴下やベルトを売っていたくせに」
これに“炎上”をもたらしたのは、敗れたラツィオのMFセナド・ルリッチが、試合後のミックスゾーンでTVカメラの前に出てきた時だった。試合中からラツィオのベンチとの間で敵意をむき出しにした挑発的なやり取りを繰り返していたリュディガーについて質問された際、思わずこう口走ったのだ。
「リュディガー? 試合前からもう何か話していたね。2年前にはシュツットガルトで靴下やベルトを売っていたくせに、今は名プレーヤー気取りだ。いや、彼のせいじゃない、周りにいる連中が礼儀知らずに育てるから悪いんだ」
このコメントで問題なのは、「シュツットガルトで靴下やベルトを売っていた」という一節だ。ここには明らかな人種差別的意図が含まれているからだ。なぜそうなのかは、説明が必要だろう。
イタリアやドイツをはじめヨーロッパの国々には、様々な形でアフリカからやってきた移民や難民が数多くいて、その中には定職を得られずその日暮らしを続けている人々も少なくない。
そういう人々が糊口を凌ぐために就いているのが、靴下やベルトを道端に広げて売ったり、100円ライターなどの雑貨や花を抱えて街を歩き人々に売り歩く露天商の仕事。日々を生き延びるためのわずかな小銭を稼ぐためにそうした仕事をこなす肌の黒い人々は、ヨーロッパ社会の中で白い目で見られ、見下されて差別を受けることも少なくない。スタジアムで黒人選手に向けられるモンキーチャントは、そのほんの一例である。
しかしもちろん、公の場では彼らに対する差別的な言動や行動は厳しく禁じられている。スポーツ選手のように子供や若者のロールモデルとして模範的な行動を取ることが期待されている“公人”にとっては尚更である。
それを前提に考えれば、ルリッチのリュディガーに対する「2年前まで靴下やベルトを売っていた」というコメントが、明らかに人種差別的な文脈を持った発言であること、そしてそれが重大な問題発言として糾弾される可能性を持っていることはご理解いただけるだろう。
たしかにリュディガーは、試合中からラツィオ・ベンチとの間で敵意をむき出しにした挑発的なやり取りを繰り返していた。その振る舞いは決して褒められるものではない。しかしだからといって、負けた腹いせに明らかに人種差別的なニュアンスを含むコメントを口走ることが許されるはずはない。
ミックスゾーンの真ん中あたりでこのコメントを残した後、出口近くでもう一度マスコミに呼び止められ、「靴下やベルト」についての真意を尋ねられたルリッチ(わずか数分の間にコメントの重大さはマスコミの間で大きく取り沙汰されつつあった)は、「リュディガーに謝る? 別に。人種差別なんかじゃない。俺たち白人だって靴下を売ってるじゃないか」と答えて火に油を注ぐことになった。
この2つの「不適切発言」は、試合後のサッカー討論番組などで大きく取り上げられ、あっという間に大論争に発展。マスコミの論調はもちろん、「試合直後で熱くなっていたことは理解できるが、それでも人種差別発言は許されるべきではない」というもの。イタリア・サッカー連盟とリーグの懲罰規程では、人種差別的な行為や発言に対して最大10試合の出場停止処分が下されることになっていることもあり、その是非についての議論も始まった。
「リュディガー? 試合前からもう何か話していたね。2年前にはシュツットガルトで靴下やベルトを売っていたくせに、今は名プレーヤー気取りだ。いや、彼のせいじゃない、周りにいる連中が礼儀知らずに育てるから悪いんだ」
このコメントで問題なのは、「シュツットガルトで靴下やベルトを売っていた」という一節だ。ここには明らかな人種差別的意図が含まれているからだ。なぜそうなのかは、説明が必要だろう。
イタリアやドイツをはじめヨーロッパの国々には、様々な形でアフリカからやってきた移民や難民が数多くいて、その中には定職を得られずその日暮らしを続けている人々も少なくない。
そういう人々が糊口を凌ぐために就いているのが、靴下やベルトを道端に広げて売ったり、100円ライターなどの雑貨や花を抱えて街を歩き人々に売り歩く露天商の仕事。日々を生き延びるためのわずかな小銭を稼ぐためにそうした仕事をこなす肌の黒い人々は、ヨーロッパ社会の中で白い目で見られ、見下されて差別を受けることも少なくない。スタジアムで黒人選手に向けられるモンキーチャントは、そのほんの一例である。
しかしもちろん、公の場では彼らに対する差別的な言動や行動は厳しく禁じられている。スポーツ選手のように子供や若者のロールモデルとして模範的な行動を取ることが期待されている“公人”にとっては尚更である。
それを前提に考えれば、ルリッチのリュディガーに対する「2年前まで靴下やベルトを売っていた」というコメントが、明らかに人種差別的な文脈を持った発言であること、そしてそれが重大な問題発言として糾弾される可能性を持っていることはご理解いただけるだろう。
たしかにリュディガーは、試合中からラツィオ・ベンチとの間で敵意をむき出しにした挑発的なやり取りを繰り返していた。その振る舞いは決して褒められるものではない。しかしだからといって、負けた腹いせに明らかに人種差別的なニュアンスを含むコメントを口走ることが許されるはずはない。
ミックスゾーンの真ん中あたりでこのコメントを残した後、出口近くでもう一度マスコミに呼び止められ、「靴下やベルト」についての真意を尋ねられたルリッチ(わずか数分の間にコメントの重大さはマスコミの間で大きく取り沙汰されつつあった)は、「リュディガーに謝る? 別に。人種差別なんかじゃない。俺たち白人だって靴下を売ってるじゃないか」と答えて火に油を注ぐことになった。
この2つの「不適切発言」は、試合後のサッカー討論番組などで大きく取り上げられ、あっという間に大論争に発展。マスコミの論調はもちろん、「試合直後で熱くなっていたことは理解できるが、それでも人種差別発言は許されるべきではない」というもの。イタリア・サッカー連盟とリーグの懲罰規程では、人種差別的な行為や発言に対して最大10試合の出場停止処分が下されることになっていることもあり、その是非についての議論も始まった。