【徹底分析】弱小マケドニアにも大苦戦…アッズーリ新監督の戦術は時代遅れ?

カテゴリ:ワールド

片野道郎

2016年10月14日

FIFAランク146位の相手に次々とカウンターを食らう…。

マケドニア戦でアンカーに入ったヴェッラッティは、57分に失点に繋がる致命的なパスミスを犯す。何よりの問題は、そうした状況を作り出してしまった戦術的欠陥にある。(C)Getty Images

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 マケドニアはFIFAランキング146位(香港やベトナムより低い)の弱小国。かつて「ジョゼ・モウリーニョのインテル」で三冠達成に貢献したベテランのゴラン・パンデフ(ジェノア)、パレルモのCFイリヤ・ネストロフスキを前線に擁するものの、その他は中堅・弱小国のリーグでプレーする無名選手ばかりのチームである。
 
 しかし、このマケドニアを相手にボールを支配して主導権を握って試合を優位に進める立場に立ったイタリアは、攻撃の局面において、スペイン戦で見られたのとまったく同じ問題を抱えることになった。
 
「後ろ4人」が自陣の中途半端な高さでボールを回した後、前線(2トップあるいはサイドの高い位置に進出したWB)にパスを送り込もうとするばかりで、中盤を経由した組み立てがまったく存在しないのだ。
 
 攻撃時の陣形は3-1-4-2。中盤の3人は、アンカーのマルコ・ヴェッラッティが最終ライン近くまで下がって自陣でのパス回しに加わる一方、インサイドハーフのフェデリコ・ベルナルデスキ、ジャコモ・ボナヴェントゥーラは敵中盤ラインの背後までポジションを上げる。
 
 そのため、後ろ4人が構成する「3-1」と前6人の「4-2」にブロックが分断されて、その間を結ぶためには難易度の高いミドル、ロングの縦パスを高い精度で送り込む以外に選択肢がない状態に陥ってしまう場面が、繰り返されることになった。
 
 これでは、ショートパスによるリズムのいい組み立てを得意とするヴェッラッティの特長を生かせないばかりか、縦パスが通らずボールを奪われた時には、陣形が間延びしているため中盤のフィルターがまったく効かず、一気に最終ラインが相手のカウンターアタックに晒されることになる。
 
 実際にマケドニアは、中盤でのボール奪取からのカウンターで繰り返してイタリア・ゴールを脅かすことになった。ボール支配率は34%に留まったものの、90分を通してイタリアのペナルティーエリアに13回も侵入、シュート14本のうち7本を枠内に収めたのだ。
 
 試合は、24分にCKからアンドレア・ベロッティが決めたイタリアがリードして前半を折り返したものの、後半に入って57分、59分にマケドニアがカウンターから立て続けに2ゴールを挙げて逆転。イタリアは75分にアントニオ・カンドレーバのクロスをチーロ・インモービレが決めて同点に追いついた後、ロスタイムにやはりカンドレーバのアシストでインモービレが決勝ゴールを奪い、何とか勝点3を持ち帰った。
 
 マケドニアの2得点はいずれも、イタリア中盤のパスミスをかっさらうカウンターから決まったもの。ヴェントゥーラ監督は「ありえないミスからの失点」と、責任を選手に押し付ける形で切って捨てた。
 
 しかし、どちらのパスミスも、2つのブロックが分断されて間延びした陣形の中で出しどころがない状態に追い込まれて犯したもので、純粋な技術的ミスというよりも戦術的欠陥が必然的に生んだミスという側面が強い。自陣でのボールロストが10回に上ったこと、失点した2回を除いてもさらに11回もペナルティーエリアへの侵入を許していることからも、それは明らかだ。
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