目指すは「オーソドックスなサッカー」
では具体的に、川崎ではどんなサッカーを見せてくれるのか。そのヒントになるのが、目指すべきスタイルとして掲げる「オーソドックスなサッカー」だ。
「攻撃的だったり守備的だったり、アグレッシブなど様々な言葉が使われますが、自分のなかではチームが一番力を出せるスタイルをやっているつもりです。それがちょっと守備的になっちゃうこともありますし、攻撃的になることもある。つまりは自分の中ではノーマル、オーソドックス、基本的、ベーシックなスタイルを貫いているつもりです。だから私の場合は、どんなスタイルかと訊かれれば、答えは『オーソドックスなスタイル』ということです。
基本的なことを大事にしますし、応用の連続ではなく、基本を大事にするなかで、変えるべき、変わらなきゃいけない部分はゲームのなかにある。もちろん常に成長するのが一番良いですし、そういう考え方をしています」
その点では、キャプテンの脇坂は「負ける確率を下げ、勝つ確率を上げていこうっていう、現実を持って、そこに対するアプローチをしてくださる方」と新指揮官の印象を話していた。
川崎は昨季、リーグ8位で、カップ戦を含めてタイトルに手が届かなかったなか、リーグ2位の66ゴールをマークした一方で、リーグで下から7番目の57失点を喫した。この失点数を「20」減らし、得点数をより増やすのが、今季のチームのひとつのテーマだ
そのなかで、キャンプ中には「もう少し練習に時間を費やしたいなって想いはあります。なかなか新しい監督、私にとっての新しい選手、新しいコーチ陣でやっていくのは、右から左にスムーズにいくという意味では簡単ではないですからね」と長谷部監督は語っていたが、初陣からACLEの2試合、リーグ開幕の名古屋戦と、無傷の3連勝(10得点・0失点)を飾ってみせているのだからさすがである。
改めて勝利から逆算し、チームの現状を的確に捉え、即断即決で指針を示していく。長谷部監督の指導はそう映る。練習中などにメモを取ることもほとんどないという。
「公式戦の時はメモを書くことはもちろんあります。忘れないようにとか、これを絶対に選手に伝えよう、コーチと話そうということなどをメモすることはあります。ただ、練習ではメニューの紙はありますが、逐一メモすることは、基本的にかなり減りました。それよりもなるべくその場で早く言ってあげたほうが選手にとってもコーチにとっても良い。気付いた時になるべく早く伝えるように意識しています。
昔、育成年代を指導していた際などは、自分の練習メニューなどをメモして、これはちょっと良くなかったなどと振り返っていましたが、それを今やっているようでは遅いと思います。今はメニューのテンポが悪いなど、そういうことは必ず起こるので、すぐその場で変えるようにしています。
もちろん書くことで、自分の頭を整理することもできます。でも、そういう風にしている間にタイミングなどをどんどん逸している。だからこそ、なるべく行動に移すように心がけているつもりです。またメモを取ってもそれが伝わらなかったら意味がないですからね。
練習メニューはストックしてありますよ。あとで見たい時、例えば春先どうだったかなとか、チームの調子が良かった時ってどんなことをやっていたかなと見ることはあります。でも、現場ではその場で伝えることを意識しています」
「攻撃的だったり守備的だったり、アグレッシブなど様々な言葉が使われますが、自分のなかではチームが一番力を出せるスタイルをやっているつもりです。それがちょっと守備的になっちゃうこともありますし、攻撃的になることもある。つまりは自分の中ではノーマル、オーソドックス、基本的、ベーシックなスタイルを貫いているつもりです。だから私の場合は、どんなスタイルかと訊かれれば、答えは『オーソドックスなスタイル』ということです。
基本的なことを大事にしますし、応用の連続ではなく、基本を大事にするなかで、変えるべき、変わらなきゃいけない部分はゲームのなかにある。もちろん常に成長するのが一番良いですし、そういう考え方をしています」
その点では、キャプテンの脇坂は「負ける確率を下げ、勝つ確率を上げていこうっていう、現実を持って、そこに対するアプローチをしてくださる方」と新指揮官の印象を話していた。
川崎は昨季、リーグ8位で、カップ戦を含めてタイトルに手が届かなかったなか、リーグ2位の66ゴールをマークした一方で、リーグで下から7番目の57失点を喫した。この失点数を「20」減らし、得点数をより増やすのが、今季のチームのひとつのテーマだ
そのなかで、キャンプ中には「もう少し練習に時間を費やしたいなって想いはあります。なかなか新しい監督、私にとっての新しい選手、新しいコーチ陣でやっていくのは、右から左にスムーズにいくという意味では簡単ではないですからね」と長谷部監督は語っていたが、初陣からACLEの2試合、リーグ開幕の名古屋戦と、無傷の3連勝(10得点・0失点)を飾ってみせているのだからさすがである。
改めて勝利から逆算し、チームの現状を的確に捉え、即断即決で指針を示していく。長谷部監督の指導はそう映る。練習中などにメモを取ることもほとんどないという。
「公式戦の時はメモを書くことはもちろんあります。忘れないようにとか、これを絶対に選手に伝えよう、コーチと話そうということなどをメモすることはあります。ただ、練習ではメニューの紙はありますが、逐一メモすることは、基本的にかなり減りました。それよりもなるべくその場で早く言ってあげたほうが選手にとってもコーチにとっても良い。気付いた時になるべく早く伝えるように意識しています。
昔、育成年代を指導していた際などは、自分の練習メニューなどをメモして、これはちょっと良くなかったなどと振り返っていましたが、それを今やっているようでは遅いと思います。今はメニューのテンポが悪いなど、そういうことは必ず起こるので、すぐその場で変えるようにしています。
もちろん書くことで、自分の頭を整理することもできます。でも、そういう風にしている間にタイミングなどをどんどん逸している。だからこそ、なるべく行動に移すように心がけているつもりです。またメモを取ってもそれが伝わらなかったら意味がないですからね。
練習メニューはストックしてありますよ。あとで見たい時、例えば春先どうだったかなとか、チームの調子が良かった時ってどんなことをやっていたかなと見ることはあります。でも、現場ではその場で伝えることを意識しています」
そうした指導論、目指すべきスタイルは、経験を積み重ねてきたからこそ生まれた。
「多くの監督の方の下で、プレーさせていただき、引退後はコーチをやらせていただき、学んできました。ヨーロッパや南米のゲームなどは時間が限られ、最近はそんなにたくさん見ることができませんが、自分が今日まで、見聞きしてきたもの、学んだもので、一番良いのはなんだろうと考えるなかで、行き着き、作られたのが今の自分の指導です」
だからこそ、長谷部監督はチームの良さ、選手の特長を活かすことを大前提としながら、川崎だからといって、自らの指針を変えることはない。
「僕自身は変わりません。と、言いますか、変わりようがありません。自分の中では今がマックスで、良い状態と信じているので、それをいかにみんなに提供できるか。みんなに理解してもらい、本当に選手が力を出せるように指導できるかが大事です。そう考えている、ここ最近ですね。
洗練されているか? それはどうか分からないですね。そこを評価していただくのは皆さんですし、最終的にはこの仕事、結果だと思います。どれだけ結果が出たかで、それが本当に良いものだったね、良い指導だったねということにつながるはずです。
ミーティングでも、『これを覚えろ』などということはしません。学校ではありませんから。声かけを含め、私が意識しているのは、選手が迷っていないか、選手が聞きたがっていることに答えられているかということ。納得してプレーしてもらえるように心がけています。そのためには、自分ひとりじゃできることは限られていますし、優秀なコーチがたくさんいますから、コーチにアプローチしてもらうこともあります。協力しながら良いものを作れたらと考えています。
もしかしたら、選手、コーチ、スタッフに押しつけているかもしれないという不安はゼロじゃありませんよ。でも、自分は自信を持ってこういう風に指導しているんだよって示すようにしています。そのなかで、突っ走ることも大事ですが、同時に少し立ち止まって考えることも大切だというスタンスでやっています」
そして改めて新シーズンへの目標を語る。
「皆さんの期待に応えられるようなチームを作りたい。これまで川崎が培ってきた攻撃的な部分、得点力を維持しながら、さらに質を上げていけば、昨年よりも点を取れる可能性があります。そして守備面で失点を減らすという部分を全員で取り組んでいきたい。それを実現することで、クラブが手にしたことのないタイトルに近づけるはずです。一番は獲ったことのないACLEのタイトル。それがクラブあげての目標ですね。
私自身は、鬼木前監督から受け継いだものを大事に、自分のできる範囲で選手が活躍できる、躍動できるようにしたい。そう思っています」
長谷部監督と鬼木監督はいわゆる、プロの監督を務められるS級ライセンス(現Proライセンス)取得の際の同期だ。
「彼みたいな人と同期だからこそ、自分のいろんな考えも高まりましたし、深まりました」
鬼木監督の後を受け、長谷部監督がどんなサッカーを見せてくれるのか。注目は高まっている。
取材・文●本田健介(サッカーダイジェスト編集部)
「多くの監督の方の下で、プレーさせていただき、引退後はコーチをやらせていただき、学んできました。ヨーロッパや南米のゲームなどは時間が限られ、最近はそんなにたくさん見ることができませんが、自分が今日まで、見聞きしてきたもの、学んだもので、一番良いのはなんだろうと考えるなかで、行き着き、作られたのが今の自分の指導です」
だからこそ、長谷部監督はチームの良さ、選手の特長を活かすことを大前提としながら、川崎だからといって、自らの指針を変えることはない。
「僕自身は変わりません。と、言いますか、変わりようがありません。自分の中では今がマックスで、良い状態と信じているので、それをいかにみんなに提供できるか。みんなに理解してもらい、本当に選手が力を出せるように指導できるかが大事です。そう考えている、ここ最近ですね。
洗練されているか? それはどうか分からないですね。そこを評価していただくのは皆さんですし、最終的にはこの仕事、結果だと思います。どれだけ結果が出たかで、それが本当に良いものだったね、良い指導だったねということにつながるはずです。
ミーティングでも、『これを覚えろ』などということはしません。学校ではありませんから。声かけを含め、私が意識しているのは、選手が迷っていないか、選手が聞きたがっていることに答えられているかということ。納得してプレーしてもらえるように心がけています。そのためには、自分ひとりじゃできることは限られていますし、優秀なコーチがたくさんいますから、コーチにアプローチしてもらうこともあります。協力しながら良いものを作れたらと考えています。
もしかしたら、選手、コーチ、スタッフに押しつけているかもしれないという不安はゼロじゃありませんよ。でも、自分は自信を持ってこういう風に指導しているんだよって示すようにしています。そのなかで、突っ走ることも大事ですが、同時に少し立ち止まって考えることも大切だというスタンスでやっています」
そして改めて新シーズンへの目標を語る。
「皆さんの期待に応えられるようなチームを作りたい。これまで川崎が培ってきた攻撃的な部分、得点力を維持しながら、さらに質を上げていけば、昨年よりも点を取れる可能性があります。そして守備面で失点を減らすという部分を全員で取り組んでいきたい。それを実現することで、クラブが手にしたことのないタイトルに近づけるはずです。一番は獲ったことのないACLEのタイトル。それがクラブあげての目標ですね。
私自身は、鬼木前監督から受け継いだものを大事に、自分のできる範囲で選手が活躍できる、躍動できるようにしたい。そう思っています」
長谷部監督と鬼木監督はいわゆる、プロの監督を務められるS級ライセンス(現Proライセンス)取得の際の同期だ。
「彼みたいな人と同期だからこそ、自分のいろんな考えも高まりましたし、深まりました」
鬼木監督の後を受け、長谷部監督がどんなサッカーを見せてくれるのか。注目は高まっている。
取材・文●本田健介(サッカーダイジェスト編集部)