【鹿島】「10番」柴崎と「8番」土居。輝き始めたふたつの才能が、鹿島を高みへと導く

カテゴリ:Jリーグ

広島由寛(サッカーダイジェストWeb編集部)

2016年04月12日

「今日だけじゃなく、全試合続ければ勝ちに近づく」(土居)。

非凡な攻撃センスが光る土居。コンディションの良さを感じさせた広島戦は存在感を見せつけたが、指揮官は「まだ100パーセントではない」と言うだけに、今後もさらなる活躍が期待できそうだ。写真:徳原隆元

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 広島戦の勝ち越しゴールを決めたのが柴崎なら、チームを勢いに乗せる先制点を挙げたのが土居だった。
 
 ミックスゾーンでは、ペン記者の囲み取材だけでなく、TV用の取材もあった。ただでさえ、試合後で疲れているはず。少なくない質問への受け答えを終え、ようやく解放されてひとり帰路につこうとする土居を引き止めるには気が引けたが、「ひとつだけ」の問いかけに、土居はわざわざ足を止めて取材に応じてくれた。
 
――前節の川崎戦後、「次は“決める”というところまで来ている」と言っていたとおり、ゴールを決めました。
 
 途中出場した川崎戦では、多くのゴールチャンスに絡んだ。決めてもおかしくない決定機もあり、「自分が決めていれば、勝負がついていた試合」と反省の弁も、「またああいう場面があったら、絶対に決めたい」と“宣言”していた。
 
 有言実行ですね、と投げかければ、土居は「まあ、そうですね」と柔らかい笑みを浮かべた。
 
「フロンターレ戦も、間を挟んでのグランパス戦(ナビスコカップ)も、チャンスはあったし、自分でも作れていた。あれだけ打ち続ければ、いつかは入る、と。時間が解決してくれると思っていた。ただ、入るか入らないじゃなくて、これを続けることが重要だった。チャンスまでいけているのは前向きに捉えていたし、今日はそれが実って良かった」
 
 開始8分だった。右サイドで西大伍からパスを受ける。背後には水本裕貴が迫っていたが、最初のタッチで軸足の裏を通して前を向き、水本をかわして一気に加速し、ペナルティエリアに侵入。逆サイドでスタンバイする中村充孝を目がけてグラウンダーの速いクロスを入れるが、これはDFに弾き返される。
 
 跳ね返ったボールは、再び、土居の元へ。右足で素早く反応し、トラップは浮いてしまったが、落ち際を正確にミートするボレーシュートでニアサイドを突き破り、豪快にネットを揺らした。
 
「コースは見ていなかった。思い切り蹴り飛ばしました」
 
 昨年10月の左第二中足骨骨折の大怪我から復帰し、待望のゴールだった。ここまでの長い道のりを考えれば当然、感慨深いものがあったのだろう。決めた時にどんな感情が湧いてくるのか、いろいろと想像していたようだが、「出来すぎた点」と振り返る“復活弾”に、「涙は出なかったけど、心は泣いていた」。
 
 ともすれば、欲しかったゴールという結果を手にしたことで、ここで満足しても不思議ではなかったが、土居はより貪欲になって“次の1点”を狙いにいった。両チーム通じて最多の5本のシュートを記録。後半のスタートからピッチに立ち、4本のシュートで2点を決めたカイオと比べれば、決定率は悪かったかもしれない。それでも、“入るか入らないじゃなくて、これを続けることが重要”と本人が語るように、最後までアグレッシブな姿勢を貫いたことに意味がある。
 
「もう1点取れれば、最高でしたけど、最低限の仕事はできたと思う」
 
 ゴール以外でも、広島の中盤と最終ラインのギャップを上手く突いたポジショニングでボールを引き出しては、攻撃にリズムをもたらしていた。
 
「相手の嫌なところを突ければいいかな、と。これを今日だけじゃなくて、全試合続けていければ、勝ちに近づくはず」
 
 積極的に“俺に寄越せ!”とパスを要求する土居には、充実感が漲っていた。それは、今季は特に「チームを引っ張ること」を強く意識しているという柴崎が、チームメイトに指示を出す姿に重ね合わせることができる。
 
 お互いの広島戦のゴールは、序章に過ぎない。23歳のアタッカーと司令塔は、常勝軍団・鹿島の新たな黄金時代の扉を開こうとしている。
 
取材・文:広島由寛(サッカーダイジェスト編集部)
 
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