最後に、まだ語り足りないという表情だった松原さんに話を聞いたところ、次のような意見を聞かせてくれた。

松原「ジュビロは、名波浩という男を信頼して、クラブとして賭けてみて、内容にも結果にもつながりました。あの決断は本当に素晴らしいと思うんですよ。名波さんは人を動かす力もあるし、人を連れてくる力もあって、サポーターからも支持されています。静岡の高校サッカーが強かった頃は、そういう魅力ある指導者がたくさんいましたよね。今は、次世代のそういうリーダーを増やしていくことが大事だと思います」
 
松原「それは監督だけでなく、クラブのフロントでも同じです。静岡には他にない歴史があり、優秀な人材も本当にたくさんいます。実際に今は、名波さん、長谷川健太さんといった強いリーダーが出てきていますよね。もちろん、それが全てだとは思わないですけど、なぜそういう人材を生かさないのかと言いたいですよ」

松原「静岡で生まれて静岡で育って静岡でプロになって、引退して指導者になって、静岡を愛している有能な人はたくさんいるのだから、その人たちに勝負させればいいじゃないですか。そうしたらみんな応援すると思いますし、『オラが街のエスパルス』になっていくと思いますよ」
 
　たしかに静岡県には他の地域にない“人材”という宝がある。強かった昔を懐かしんでいるだけでは何も生まれないが、その歴史から生まれた財産は、今も輝きを放っている。そうした静岡ならではのアドバンテージを生かすことも、王国復権のヒントになるのではないだろうか。

取材・文：前島芳雄（スポーツライター）