【コラム】デットマール・クラマーが日本サッカーに残したものとは――

カテゴリ:Jリーグ

加部 究

2015年09月21日

厳しさと愉しさを体験させ、伸びようとする意欲を刺激したクラマー。

9月19日・20日のJリーグの試合では、キックオフ前に黙祷が捧げられた。クラマー氏が残した教えは、これからの日本サッカーにも引き継がれていくべきものだ。(C) Getty Images

画像を見る

 クラマーの功績を書き連ねれば枚挙に暇がない。だが実は常にその根幹を成したのは、すべては選手のために、つまりプレイヤーズ・ファーストの精神だったのではないかと思う。
 
 選手たちの個性を見極め、彼らを伸ばすために究極の努力を惜しまない。その情熱は、杉山隆一や釜本邦茂、あるいはベッケンバウアーやルンメニゲにも等しく傾けられ、検見川で開催されたアジアで初めてのコーチングスクールの際は、救急車で運ばれても寝る間を惜しんで尽力した。
 
 韓国代表のJリーガー第一号のノ・ジョンユンは言う。
「五輪代表でクラマーさんに指導を受け、初めてサッカーが楽しいということを知りました」
 
 彼は大学に入るまで、フィジカルを中心とした苛烈な練習の日々を送って来た。だから高校時代のチームメイトは、競技の楽しさを知らぬまま全員が辞めてしまったという。一方クラマーは、一向に変わらない韓国の指導方法に嫌気がさして五輪代表監督を辞任する。
 
「私は朝から400メートルのタイムトライアルをやらせるために来たのではない」
 育てるというのは、無理強いすることではない。厳しさと愉しさを体験させ、伸びようとする意欲を刺激することだと、クラマーは教えてくれた。琴線に響く接し方をするから、選手たちもそれに応えようと力を振り絞る。
 
 そして少しでもその真髄を共有する指導者が増えれば、日本サッカーも活気づいていくはずである。
 
 クラマーは東京五輪を終え、帰国する際に日本サッカーを改善するための5つの提言を残した。一方フィリップ・トルシエは、来日早々から問題点をストレートに指摘し続けた。個人的には、歯に衣着せぬトルシエのやり方も嫌いではない。しかし両者を比べれば、この国でクラマーがいつまでも愛される理由がよく判る。
 
文:加部 究(スポーツライター)
【関連記事】
【識者コラム】ハリル采配に変化の兆しを見るも、現行のメンバー選考・強化策がW杯本番につながるのか?
【識者コラム】いよいよJ開幕――2ステージ制不要論を巻き起こす「真の王者」の誕生に期待
【W杯 識者総括】看板スターに賭けた有力国の栄枯盛衰を横目に、ドイツが満喫する別格の充実
W杯メンバーから読み解く近未来の日本代表は?
【U-15日本代表】17-0からでは伝わらない真実 初戦5得点の久保建英が先発の座を掴むまで
【岩本輝雄の視点】“3秒で勝点3を稼ぐ男”俊輔は、直接FKのようにクロスを蹴る

サッカーダイジェストTV

詳細を見る

 動画をもっと見る

Facebookでコメント

サッカーダイジェストの最新号

  • 週刊サッカーダイジェスト なでしこJに続け!
    4月10日発売
    U-23日本代表
    パリ五輪最終予選
    展望&ガイド
    熾烈なバトルを総力特集
    詳細はこちら

  • ワールドサッカーダイジェスト 世界各国の超逸材を紹介!
    4月18日発売
    母国をさらなる高みに導く
    「新・黄金世代」大研究
    列強国も中小国も
    世界の才能を徹底網羅!!
    詳細はこちら

  • 高校サッカーダイジェスト 高校サッカーダイジェストVo.40
    1月12日発売
    第102回全国高校選手権
    決戦速報号
    青森山田が4度目V
    全47試合を完全レポート
    詳細はこちら

>>広告掲載のお問合せ

ページトップへ