連載|熊崎敬【蹴球日本を考える】サッカーの奥深さを伝える松本の「汚いボール」

カテゴリ:Jリーグ

熊崎敬

2015年09月14日

サッカーは美しさを競うものではない。

終了間際の失点で勝利を逃した松本だが、その戦いぶりはサッカーの奥深さ、面白さを改めて教えるものだった。写真:徳原隆元

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「汚いボール」とは、スペースに弾むロングボールのことだ。
 湘南はJリーグで恐らくもっとも最終ラインが高いチームであり、GK秋元とアンドレ・バイアの間には広大なスペースが横たわる。松本はオビナに当てず、そのスペースにボールを蹴り込んだ。
 
 汚いボールには、ふたつの種類がある。
 
 ひとつは長めのボール。
 GK秋元がペナルティエリアを出て、難しい体勢でクリアするしかないようなロングボールを蹴り込み、そこにオビナや工藤が猛然とプレッシャーをかける。
 
 もうひとつは高めのボール。
 地面に大きく弾んだボールは、ダイレクトのボールに比べて、DFにとっては処理が難しい。落下地点で待つのではなく、弾んだところに走り込まなければならないし、空中で競り勝ってもボールの勢いが殺されているため大きくクリアできないからだ。
 
 巨漢のオビナが弾んでいるところに強引に身体を入れ、その間に2列目が援軍に駆けつける。そうした形で何度も湘南をトラブルに巻き込んだ。
 
 サッカーは美しさを競うものではない。
 ゴールが遠ければ、その距離を有効活用すればいい。
 
 松本が見せた「汚いボール」、それはサッカーの奥深さ、面白さを改めて教えた。
 
取材・文:熊崎 敬
 
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