スタメン平均年齢は27.2歳。3年後も底上げや代謝なしに戦えるとは思えない。
ただし就任3か月のハリルホジッチ監督は、確かに「やるべきことをやった」とも言える。アタッキングゾーンから果敢な守備を開始し、大半は敵陣で攻撃の芽を摘み取り、再度攻撃へとつなげた。「100パーセント決まる形が19回」(ハリルホジッチ監督)は大袈裟だとしても、その半分くらいは決まらない方が不思議なチャンスを積み上げた。
敢えて苦戦の要因を絞り出すとすれば、あまりに緩かった5日前の親善試合に行き着く。
なぜか日本代表は、大舞台への出陣前には景気づけを図りたがるのだが、あまり効果が上がったケースは見当たらない。2006年ドイツワールドカップの開幕前最後の仕上げがマルタ戦、昨年はブラジル出発前にキプロス戦を行ない、どちらも緊張感を欠く試合になった。逆に2010年南アフリカ大会前は、コートジボワールやイングランドなど強豪と試合をすることで、課題も手応えも確認できた。
今回メンバー、コンディション、モチベーションと3拍子揃って欠落したイラクは、まるで日本代表に花道を開けるかのように、パスもドリブルも気持ち良く通してくれた。これでは格上の日本に最大限に警戒を施して来たシンガポールの厳しい対処が身に染みたはずだ。
日本側に少しずつ焦燥が広がるごとに、シンガポールは集中力と勇気を増していく。1996年アトランタ五輪で日本がブラジルを下したマイアミの奇跡や、4年前になでしこが開催国のドイツを下した一戦と似たシナリオだ。
「欧州で長いシーズンを過ごした日本の主力選手たちは、やや疲労を残し、やや集中力を欠いたかもしれないし、我々に対する過小評価があったかもしれないね」(シンガポール代表ベルント・シュタンゲ監督)
ハリルホジッチ監督も「こういう試合には罠がある」と盛んに危機感を促したが、それは生真面目な日本人選手には逆効果になったのかもしれない。
もちろんそれでも日本の最終予選進出は揺るがない。しかし反面「衝撃的な結果」(シュタンゲ監督)の持つ意味は小さくない。シンガポールと分けてしまったことで、日本はアフガニスタンやカンボジアからも大量ゴールを狙う必要に迫られる可能性が出てきたからだ。これは指揮官の考え方次第だが、こうした試合もベストメンバーで臨もうとする可能性が出てきた。
だがアジアの2次予選で大量点を奪えても、世界で戦うための強化にはつながらない。一方でシンガポール戦に臨んだ日本代表のスタメン平均年齢は27.2歳。3年後も底上げや代謝なしに戦えるとは思えない。
アジア予選のフル工程をひたすら全力疾走した先に、世界での好成績を描くのは難しい。
取材・文:加部 究(スポーツライター)
敢えて苦戦の要因を絞り出すとすれば、あまりに緩かった5日前の親善試合に行き着く。
なぜか日本代表は、大舞台への出陣前には景気づけを図りたがるのだが、あまり効果が上がったケースは見当たらない。2006年ドイツワールドカップの開幕前最後の仕上げがマルタ戦、昨年はブラジル出発前にキプロス戦を行ない、どちらも緊張感を欠く試合になった。逆に2010年南アフリカ大会前は、コートジボワールやイングランドなど強豪と試合をすることで、課題も手応えも確認できた。
今回メンバー、コンディション、モチベーションと3拍子揃って欠落したイラクは、まるで日本代表に花道を開けるかのように、パスもドリブルも気持ち良く通してくれた。これでは格上の日本に最大限に警戒を施して来たシンガポールの厳しい対処が身に染みたはずだ。
日本側に少しずつ焦燥が広がるごとに、シンガポールは集中力と勇気を増していく。1996年アトランタ五輪で日本がブラジルを下したマイアミの奇跡や、4年前になでしこが開催国のドイツを下した一戦と似たシナリオだ。
「欧州で長いシーズンを過ごした日本の主力選手たちは、やや疲労を残し、やや集中力を欠いたかもしれないし、我々に対する過小評価があったかもしれないね」(シンガポール代表ベルント・シュタンゲ監督)
ハリルホジッチ監督も「こういう試合には罠がある」と盛んに危機感を促したが、それは生真面目な日本人選手には逆効果になったのかもしれない。
もちろんそれでも日本の最終予選進出は揺るがない。しかし反面「衝撃的な結果」(シュタンゲ監督)の持つ意味は小さくない。シンガポールと分けてしまったことで、日本はアフガニスタンやカンボジアからも大量ゴールを狙う必要に迫られる可能性が出てきたからだ。これは指揮官の考え方次第だが、こうした試合もベストメンバーで臨もうとする可能性が出てきた。
だがアジアの2次予選で大量点を奪えても、世界で戦うための強化にはつながらない。一方でシンガポール戦に臨んだ日本代表のスタメン平均年齢は27.2歳。3年後も底上げや代謝なしに戦えるとは思えない。
アジア予選のフル工程をひたすら全力疾走した先に、世界での好成績を描くのは難しい。
取材・文:加部 究(スポーツライター)