命運を分けたPK献上の背景。メキシコに狙い撃ちされた日本の強み【東京五輪】

カテゴリ:連載・コラム

河治良幸

2021年08月08日

酒井が積極的に追い越したのも信頼があったからだろう

久保(7番)と堂安(10番)の細かいコンビプレーこそ日本の強み。ただメキシコからすれば、そこが狙いどころだった。写真:金子拓弥(サッカーダイジェスト写真部/JMPA代表撮影)

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 当然VARチェックは作動していたはずだが、レフェリーのオンフィールドレビューには至らなかった。その判定がどうだったかという議論は多くなされているが、フォーカスしたいのはメキシコに狙われた日本の“ウィークポイント”だ。

 堂安と久保にボールが入った時に、日本はある程度の信頼を持って前がかりに連動しようとする。酒井が積極的に追い越したのも、その場の判断だけでなく信頼ありきだろう。

 しかし、日本がストロングと考えていた久保と堂安の細かいコンビプレーこそ、メキシコにはボールの奪いどころであり、いざ奪った時に大きなチャンスになる狙いどころだった。

 形としてはメキシコにアドバンテージを取られて、日本は完全に後手に回されていたが、遠藤の能力をもってすれば止め切るか、難しいと判断すれば吉田に託すか、どちらかで凌いでほしいシーンでもあった。

 遠藤のファウルでPKになったシーンだが、実はもう1つ非常に狡猾な動き出しがあった。久保と遠藤の間を抜け出そうとするベガからマルティンがパスを引き出そうと、田中と吉田の間でのぞく動きをした。田中も吉田もそこに意識が引っ張られるが、その背後にボランチのカルロス・ロドリゲスが入り込んでいたのだ。

 結果的にベガがさらなるドリブルを選択したが、マルティンをスルーする形で田中と吉田の間を通されていたら、日本のディフェンスとしてはほぼ終わっていた。ゴール前では冨安がコルドバ、その外側では中山が右アタッカーのディエゴ・ライネスをマークしなければいけない状況になっていたからだ。
 
 その意味ではベガがドリブルを選択してくれたからこそ、遠藤が止めるか、吉田に託すかという話ができる訳で、メキシコ側の選択1つでそういう話にすらならない失点シーンが生まれていたかもしれない。

 メキシコは紛れもなく強敵であり、しかもグループステージで当たった時よりチームが成熟しているところも注意点だったが、やはり一度対戦して日本の強みを見せていることをもっと考えて、先発メンバーを組んでいくべきではなかったか。

 試合には表裏があるが、このメキシコ戦に関してはかなりの確率でほぼ同じシチュエーションから失点につながった可能性が高いと見ている。

 さらに22分、グループステージの対戦では退場していたホアン・バスケスにセットプレーから“リベンジ弾”をくらってしまった日本は、58分にもCKからベガに3点目を叩き込まれた。そこから途中出場の三笘薫のゴールで一矢報いたが、銅メダルのかかった3位決定戦で、先に3点を取られたら9割方勝負は決したと言ってもおかしくない。

【五輪代表PHOTO】U-24日本2-1U-24メキシコ|久保&堂安弾で2連勝! ボランチ遠藤は圧巻の存在感を披露
 
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