【消えた逸材】EURO2004で史上最年少ゴール! “スイスの天才”はなぜ伸び悩んだのか?

カテゴリ:連載・コラム

ワールドサッカーダイジェスト編集部

2021年05月28日

引退後は代理人に転身。人情派として選手に寄り添う

レッドブル・ザルツブルクからチューリヒにレンタルしていた09-10シーズンは、27試合に出場して10ゴールとまずまずの成績を収めたが……。(C)Getty Images

画像を見る

 思うに任せない状況のなか、救いを求めたのが信仰だった。キリスト教への信心はやがて高じ、十戒を厳格に守る「セブンスデー・アドベンチスト教会」に帰依し、これがキャリアの選択肢をさらに狭めることになった。

 十戒にしたがって安息日(=土曜日)を大切にするため、欧州でのプレー続行が困難に。どうにか見つけた新天地は、祖国コロンビアのイタグイ(現リオネグロ・アギラス)という地方の新興クラブだった。ただ、このイタグイでも膝の故障で満足にピッチに立つことができなかった。
 
 その後はスイスに戻り、グラスホッパー、シャフハウゼン、セルベッテ、ヴィルと主に下部リーグを渡り歩き、2018年夏、32歳で現役生活に終止符を打った。アキレス腱断裂の大怪我が直接の引き金だった。

 引退後は代理人に転身し、後進を導いている。「選手を取り巻く状況に目を配るようにしている。とくに両親の支えがあるかどうかは重要だ」と語る、いわば人情派だ。

 こうして選手に寄り添うのは、親身になって支えてくれる周囲のサポートの大切さを身をもって知るからだ。前述のようにPSV時代は一人暮らしで苦労した。2歳年上で仲の良かった同僚、アリエン・ロッベンが家族に助けられながら屈託なくサッカーに打ち込むその姿が羨ましかったという。
 フォンランテンを苦しめたもの、それは疎外感だったのかもしれない。
 
 スイス移住に際しては、母親が再婚相手と先に渡欧し、兄弟姉妹とともにコロンビアの祖父母の元に残された。子供たちが移住後に苦労しないよう生活の基盤を整えるためだったというが、別離の期間は7年にも及んだ。

 捨てられたのではないかと、少年の心は不安と恐怖でいっぱいだったに違いない。いざスイスに渡ってからは、学校では年齢より下の学級に入り、サッカーでは飛び級で年長のチームに加わり、居心地の悪さを感じることばかりだった。

 心から安心できる自分の居場所を見つけられなかったそれこそが、彼のサッカー人生を悪い方向に決定づけてしまったと言えるのではないだろうか。

文●松野敏史

※『ワールドサッカーダイジェスト』2021年4月15日号より転載
【関連記事】
【消えた逸材】バルサのカンテラで「メッシと双璧」と呼ばれたMFは、なぜ表舞台から姿を消したのか
【消えた逸材】14歳でMLSデビューを飾った“神童”アドゥはいま何をしているのか? その後のキャリアを追う
【消えた逸材】マンUで鮮烈デビューを飾った“イタリアの神童”が語る「人生最大の過ち」とは?
【消えた逸材】ついに無所属に…バルサ出身の天才FWボージャンが急失速した"知られざる理由"
【消えた逸材】放送禁止用語を口にするなど愚行を繰り返し…。うつ病を患って輝きを失ったチェコの天才はいま?

サッカーダイジェストTV

詳細を見る

 動画をもっと見る

Facebookでコメント

サッカーダイジェストの最新号

  • 週刊サッカーダイジェスト 唯一無二の決定版!
    2月15日発売
    2024 J1&J2&J3
    選手名鑑
    60クラブを完全網羅!
    データ満載のNo.1名鑑
    詳細はこちら

  • 週刊サッカーダイジェスト いざW杯予選へ!
    3月8日発売
    元代表戦士、識者らと考える
    日本代表の現在地と未来
    2026年へのポイントは?
    J1&J2全クラブ戦力値チェックも
    詳細はこちら

  • ワールドサッカーダイジェスト 夏の移籍を先取り調査!
    3月21日発売
    大シャッフルの予感
    SUMMER TRANSFER
    夏の移籍丸わかり
    完全攻略本2024
    詳細はこちら

  • 高校サッカーダイジェスト 高校サッカーダイジェストVo.40
    1月12日発売
    第102回全国高校選手権
    決戦速報号
    青森山田が4度目V
    全47試合を完全レポート
    詳細はこちら

>>広告掲載のお問合せ

ページトップへ