舐められたら終わりだ、という勝負への厳しさが柏には根づいている。
後半に入っても柏のリズムは変わらない。だが、60分過ぎから雲行きが怪しくなった。67分にイ・ドングッに強烈なオーバーヘッドを決められると、79分にもふたたびイ・ドングッにミドルを捻じ込まれ、気がつけば1点差に。勝負は分からなくなった。
最初の60分、ゲームを支配したのは柏の精密な戦術、技術だった。だが、残り30分は全北の時間となる。彼らは韓国屈指のストライカーであるイ・ドングッの決定力と局面での荒々しさによって、柏を捻じ伏せようとしたのだ。
後ろから突き飛ばす、すれ違いざまに膝を当てる、スパイクの裏を見せたタックルを繰り出す……。
それは日本勢がもっとも苦手とするゲーム。だが、柏は弱腰にはならなかった。危険なタックルを見せた敵にクリスティアーノが食ってかかり、工藤も加勢する。舐められたら終わりだ、という勝負に対する厳しさが柏には根づいている。それは過去4年半、チームを率いたネルシーニョの遺産だ。
戦術と技術で敵を圧倒した柏は、肉弾戦に引きずり込まれても戦う姿勢を失わなかった。上手さと泥臭さの両面を持っているから、ACLでも結果を残すことができるのだ。
この一戦を見て、私はふたりの評価を素直に改めることになった。
ひとりは茨田。いままで関係者から、その才能を高く評価する声を聞いていたが、私は懐疑的だった。その彼に、吉田監督はチームの舵取りを託す。正直、荷が重いのでは……と思ったが、この大一番で彼は十分にできることを証明した。
もうひとりは吉田監督。育成部門の充実は、この人の存在抜きには語れないが、トップチームの監督は初体験。偉大な前任者ネルシーニョと比較されるなかで結果を出すことができるかどうか。
だが40歳の指揮官は冷静に状況を判断し、現実に徹する場面と理想を貫く場面を巧みに使い分けながら、柏をベスト16に導いた。
今季もまた、アジアで輝くのは柏の太陽かもしれない。
取材・文:熊崎 敬
最初の60分、ゲームを支配したのは柏の精密な戦術、技術だった。だが、残り30分は全北の時間となる。彼らは韓国屈指のストライカーであるイ・ドングッの決定力と局面での荒々しさによって、柏を捻じ伏せようとしたのだ。
後ろから突き飛ばす、すれ違いざまに膝を当てる、スパイクの裏を見せたタックルを繰り出す……。
それは日本勢がもっとも苦手とするゲーム。だが、柏は弱腰にはならなかった。危険なタックルを見せた敵にクリスティアーノが食ってかかり、工藤も加勢する。舐められたら終わりだ、という勝負に対する厳しさが柏には根づいている。それは過去4年半、チームを率いたネルシーニョの遺産だ。
戦術と技術で敵を圧倒した柏は、肉弾戦に引きずり込まれても戦う姿勢を失わなかった。上手さと泥臭さの両面を持っているから、ACLでも結果を残すことができるのだ。
この一戦を見て、私はふたりの評価を素直に改めることになった。
ひとりは茨田。いままで関係者から、その才能を高く評価する声を聞いていたが、私は懐疑的だった。その彼に、吉田監督はチームの舵取りを託す。正直、荷が重いのでは……と思ったが、この大一番で彼は十分にできることを証明した。
もうひとりは吉田監督。育成部門の充実は、この人の存在抜きには語れないが、トップチームの監督は初体験。偉大な前任者ネルシーニョと比較されるなかで結果を出すことができるかどうか。
だが40歳の指揮官は冷静に状況を判断し、現実に徹する場面と理想を貫く場面を巧みに使い分けながら、柏をベスト16に導いた。
今季もまた、アジアで輝くのは柏の太陽かもしれない。
取材・文:熊崎 敬