だが、エムバペはその後も冴えなかった。

　2021年に入ってからも無得点が続き、パフォーマンスもパッとせず。トロフェ・デ・シャンピオン（１月13日、マルセイユと対戦してパリSGが優勝）では、酒井宏樹とマッチアップし、エムバペがポジションを変えると日本代表DFも付いてくるという徹底マークに遭った。この勝負はエムバペの完敗に終わり、パリSGサポーターが激怒したほどだ。その前のブレスト戦では、ゴールどころか枠内シュート数も「０本」だった。

　これを受け、元フランス代表で大御所アナリストでもあるジャン＝ミシェル・ラルケは「パリSGに彼の場所はない」と断言。ジル・ファバールも「ジャン＝ミシェルの言うとおりだ。だがフランス代表に行くとあれ（グリグリ）をしない。彼にちゃんと真実を言っている人がいるのか。誰かが言わなくちゃいけない。ただ彼がちゃんと聞く耳をもっているかどうか。問題はそこだ」と指摘した。

　では、エムバペにいったい何が起きていたのか。原因をめぐっても諸説が交錯・激突した。

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　第一に、疲労説だ。CLの準々決勝に脅威の治癒力を発揮して復帰出場したうえ、コロナ感染、新たなケガ、コロナ禍による凄まじい試合数……と休みなくここまできた。そのため、現地局『EUROPE 1』のヴィルジニー・フュルパンは、「（原因は）シンプル。彼は疲労の極限にある。だからボールをもらうや、ほらよ、とばかりにまたぎを披露しては失敗する。スピードものろくなっている。休息を与えるべし。キリアン、スーツケースをまとめてバカンスに出なさい」と主張した。

　ふたつめは、同僚であるネイマールの影響説。元ラグビー代表でバルサ専門家として知られるエリック・ブランは、「ネイマーリザシオン（ネイマール化）だ。ネイを真似て、ボールをもらってはグリグリをし、つっかかってでもテクニックを披露しようとしている。だがそのうち脱する」と分析している。

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　そして、契約延長の問題説だ。パリとエムバペの契約は2022年６月で満了する。スポーツディレクターのレオナルドは、１年以上前に契約延長に向けた交渉を提案しているが、エムバペは急がず、なかなか進展しなかった。そしてつい最近になって彼は、胸のうちをこう明かした。