香川を5000万円で獲得したドルトムント。マンU移籍時には約20億円の移籍金が…
2010年夏に香川を獲得したドルトムントも、セレッソ大阪にはTC(トレーニング・コンペセーション=育成補助金)しか払っていない。その金額は5000万円程度と言われたが、その香川が2012年にマンチェスター・ユナイテッドへ赴いた際には20億円近い移籍金を手に入れたと言われる。
久保裕や香川らの場合はレンタルではなかったが、日本人の若手選手を欧州クラブが獲得する際、最初の1年間はレンタルという形が多い。というのも、「才能がない」と判断すれば、買い取りオプションを行使せずに元の所属先に戻せばいいし、金銭的には何の負担も生じない。ノーリスクに近い状況なのだ。
そして、上記の例に象徴される通り、当たった時の収益は想像を絶するほど大きい。「日本人選手の技術レベルが高く、勤勉でハードワークを厭わず規律を持ってプレーする」というのは、すでに先人たちが築いてきた実績から分かっているから、各クラブとも安心して獲得に踏み切れる。こうした流れが海外移籍の低年齢化に拍車をかけているのだろう。
だからこそ、5か国9クラブを渡り歩いた松井大輔(サイゴンFC)も自著「日本人が海外で成功する方法」(KADOKAWA刊)の中で「自分が商品であることを自覚すべき」と強調する。今の若い選手たちは「海外に行きたい」と口々に夢を語るが、自分の立ち位置をしっかりと把握することが大前提となる。彼らは移籍先の指揮官や経営者の思惑通りに物事が運ばなければ、すぐに契約を切られる危うい立場。そんなリスクも覚悟したうえでチャレンジしなければ、「こんなはずじゃなかった」という結果に終わる可能性も否定できないのだ。
海外挑戦の厳しい現実を認識するためにも、プロで1~2年のキャリアを積むことがベターではないか。それは百戦錬磨の松井も、高校サッカー界の名将・本田裕一郎氏(現国士舘高校テクニカルアドバイザー)も語っていること。Jに入れば、海外サッカー市場の現実をJクラブ強化部スタッフや代理人、選手仲間から伝え聞き、知識を養えるからだ。