【連載】小宮良之の『日本サッカー兵法書』 其の十「一流の基準」

カテゴリ:特集

小宮良之

2015年03月19日

独立独歩でいながら、チームのために身を捨てられるシャビ・アロンソ。

数々のタイトルを手にしたシャビ・アロンソ。歴代監督から全幅の信頼を寄せられる背景には、彼ならではの義侠心と惻隠の情がある。志高の武士とも言える稀有な存在だ。 (C)Getty Images

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 シャビ・アロンソは常に沈着な選手だ。驚いて行動する、というような慌てたところがない。どんな劣勢であっても、“これは遊技だ”という達観と“男子の本懐を遂げる”という覚悟の両方で挑んでいる。男としての余裕が見え、こうした仲間がいる集団というのは強固だ。
 
 事実、彼の所属するチームは大きな成功を収めている。若き日に在籍したレアル・ソシエダはリーガ・エスパニョーラで熾烈な優勝争いを演じ、リバプールはフットボール史に残る逆転劇で欧州王者に君臨。レアル・マドリーも欧州王者、リーガ王者、国王杯優勝とタイトルを総なめにした。
 
 また、スペイン代表もEURO、そしてワールドカップを制覇。現在所属するバイエルン・ミュンヘンも、記録的な強さを見せる。
 
 シャビ・アロンソは、戦闘者としての徳をほぼ性質的に持っていたそうだ。エチャリはそこに目を付けた。近著『おれは最後に笑う』(東邦出版)でも書き記しているが、バスク人MFの言葉は骨っぽい。
 
「僕はどんな時もベストを尽くすだけさ。自分自身の力なんてちっぽけなもの。チームのために、身を粉にして働けるかどうか。厳しい戦いをひとりで勝ち抜くことなんてできない」
 
 歴代監督たちが、ピッチの将軍たるシャビ・アロンソに全幅の信頼を寄せたのは必然だった。決して徒党を作らず、監督に追従する腰巾着にもならない。独立独歩でいながら、チームのために身を捨てられる。こうした存在は希有と言える。
 
「チームの勝利がすべてさ」
 
 シャビ・アロンソは行動によってその言葉を裏付けてきた。その義侠心と惻隠の情は、至高の武士、いや一流のフットボーラーの証だろう。
 
こみや・よしゆき/1972年、横浜市生まれ。大学在学中にスペインのサラマンカ大に留学。01年にバルセロナへ渡りライターに。選手のみならず、サッカーに全てを注ぐ男の生き様を数多く描写。近著に『おれは最後に笑う』(東邦出版)。
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