【連載】小宮良之の『日本サッカー兵法書』 其の七「銭と浪漫」

カテゴリ:特集

小宮良之

2015年02月26日

銭を生み出し、動かすのは、プロスポーツの絶対的正論。

「サッカーの価値はサッカーでのみ高まる」。リーガ・エスパニョーラではその観念が強く、バルセロナの胸スポンサーが解禁されたのは、2011-12シーズンから。(C)Getty Images

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 人気向上と収益アップのために、Jリーグはたくさんの手を打っている。2ステージ制によるポストシーズン採用はその最たる例だろう。新規スポンサー獲得による増収だけでなく、世間で話題になることを狙っているという。Jリーグそのものにも冠スポンサーを付け、“銭を動かす”ことに躍起だ。
 
 金の流動が人を動かし、Jリーグを大きくする……。そんな視点で動いているように映るが、資本主義、あるいは商業主義の思考展開において、まっとうな政策と言えなくもない。
 
 Jリーグ冠スポンサーに否定的な声もあるが、例えばリーガ・エスパニョーラ1部はBBVAという大手銀行が冠スポンサーになっている。今後は各クラブが外資スポンサーを求める(現行のルールでは日本国籍を有する個人または企業がクラブの株式の51%以上を所有していなければならない)のも必然だろう。こうした銭の流れが止まれば、人の流れも淀み、クラブ経営は危機に陥る。
 
 ドイツサッカーが世界を制したのは、クラブ経営力の隆盛によるものだと言われる。老朽化したスタジアムの設備改築、美化、そして総合デパート化。施設の改善によって多くの人が集まるようになると、マーケティング価値が一気に高まり、入場者が増え、スポンサーが付き、マーチャンダイジングも好調というサイクルを生み出した。
 
 経済のうねりがドイツサッカーを底からもり立て、再び世界を制するまでに至ったという分析も成り立つ。
 
 銭を生み出し、動かす。それはしつこいようだが、プロスポーツにおける絶対的正論である。
 
 しかしその視点だけで、Jリーグはメジャースポーツとして君臨できるのだろうか?
 
レアル・マドリー、バルセロナ、アトレティコ・マドリーを擁し、世界最高峰のリーグと言えるリーガ・エスパニョーラは、むしろ経営努力を怠ってきた。バルサやアスレティック・ビルバオは近年ようやく胸スポンサーを解禁したが、それすらも長く“禁じ手”として封じてきた。サッカーの価値はサッカーでしか高められない。その通念が彼らの地力となったのだ。
 
 試合を盛り上げるため、アイドルがイベントを行なうなどもってのほかだろう。「商業的な匂いがしてしらける」とファンは断言する。最近はやたらと“スポーツビジネスの視点から”という話を聞くが、スポーツビジネスとしてイベントとの抱き合わせを奨励しているのはアメリカが中心で、欧州サッカー界ではほとんど受け入れられていない。
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