【連載】小宮良之の『日本サッカー兵法書』 其の九「正義と悪」

カテゴリ:特集

小宮良之

2015年03月12日

90分間のマネジメントを改めて突き詰めるべき。

3月3日のビン・ズオン戦では、ポゼッションに重心を置きながら割り切った守備も披露。ACLでの柏の戦いぶりは、試合を通したマネジメントの面で参考にすべきだろう。写真:佐藤明(サッカーダイジェスト写真部)

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 日本サッカーの頂点であるはずのJリーグのクラブはポゼッションを唱えながら、多くの場合、笛吹けど踊らず。ACLにおいて、単純なボールロストから逆襲されて敗れる有様は惨状に等しい。ボールを失った時に守備の準備ができておらず、単純なフィジカルインテンシティも惰弱。そのポゼッションは無垢さをさらけ出してしまっている。
 
 アジアにおける柏の戦い方は、一筋の光明と言えるだろう。基本はポゼッションにあり、その時間を延ばすこと、攻撃することを念頭に置いている。ビン・ズオン戦では工藤壮人が前線でボールをさばき、良いポジションを取ることで攻撃を活性化させ、なによりゴールを仕留めた。その一方でチーム全体が常に守りを忘れず、時に受けて立って守り抜くような図太さも見せられる。
 
 日本サッカーは“なにが技術なのか。90分間をどうマネジメントするのか”を改めて突き詰める必要があるだろう。
 
 百戦錬磨のプロ選手が未熟なユース選手と決定的に違うのは、相手を肌で感じ、それ次第で「そっちがボールを回せるのなら、まずはそれを受けてやるよ」と腹を括れる点にあるだろう。そうやって技術が出せない状態へと追い込む。ポゼッション=正義と画一的に育ってきた選手たちは、半端なボール技術が徒となってしまう。
 
 もっとも、フットボールは正義か悪か、どちらかを論ずるべきではない。
 
 例えばバルセロナを率いていたジョゼップ・グアルディオラ監督は、攻撃のポゼッションを守備にも応用している。
 
「選手が良い距離感で攻めていれば、たとえボールロストしてもそこから集中して守備にいける」という考え方だ。これによって波状攻撃が可能になり、カウンターも回避できるようになった。
 
 発想の転換で思いの外、様変わりするケースもある。
 
こみや・よしゆき/1972年、横浜市生まれ。大学在学中にスペインのサラマンカ大に留学。01年にバルセロナへ渡りライターに。選手のみならず、サッカーに全てを注ぐ男の生き様を数多く描写。近著に『おれは最後に笑う』(東邦出版)。
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