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【消えた逸材】両膝の怪我、ナスリの罵声…エッシェンにも喩えられたアーセナルの元有望株に迫る!

カテゴリ:連載・コラム

ワールドサッカーダイジェスト編集部

2020年10月03日

ナスリから一方的に目の敵にされて、掴み合いも

アーセナル退団後は、ウォルバーハンプトン、チャールトン、バーンズリー(写真)などを転々とし、27歳で引退した。 (C)Getty Images

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 初先発のその試合で退場し、チームは0-2の完敗。これだけでも最悪なのに、ロッカールームで追い討ちをかけられる。

「お前のせいで負けたんだ」

 サミア・ナスリから情け容赦のない罵声を浴びた。

「言い分は分かる。でも、それってまともなプロがすることなのか。デビューしたての若手に、あの状況で掛ける言葉だろうか」

 引退後、ウェブメディア『ジ・アスレティック』の取材で怒りを滲ませた。

 どういうわけか、ナスリから一方的に目の敵にされた。彼がマンチェスター・シティに移籍しても敵視は続き、初対戦時にピッチで口汚く罵られ、言い返して口論となり、試合後のトンネルで揉み合いとなった。
 怪我に悩まされ、ナスリに煩わされ、それでも試練は終わらない。実戦経験を積むため12年1月にレンタル移籍したウォルバーハンプトンで、あろうことか再び前十字靭帯を断裂。今度は右膝で、8か月の戦線離脱……。

 結局、両膝に負った怪我は致命的だった。復帰してもフォームは取り戻せず、このあとアーセナルでプレーすることはなかった。公式戦16試合の出場でノーゴール。これが、ガンナーズでのキャリアのすべてだった。

 14年夏にロシアに渡り、スウェーデンを経て、キプロスが現役最後の地となった。引退発表は19年3月、27歳だった。 

 振り返ってみれば、マイケル・エッシェンにも喩えられたフリンポンのフットボール人生は、始まりすらしなかったのかもしれない。

 試練の連続だった現役生活とは違って、第二の人生は順風満帆の滑り出しだ。カナダの大学で経営学を修め、27歳にして父親が所有する母国ガーナの地元クラブ、アシャンティ・ゴールドのCEOに就任した。

 放送局やホテルを含む巨大コングロマリットを一代で築き上げた父の血筋を引いてか、商才に恵まれているようだ。「ビジネスマンとしての父が、この僕を選んだんだ」と、“コネ採用”を否定する。

 CEOとしての目標は明確だ。英公共放送『BBC』にこう語っている。

「アシャンティをアフリカでも指折りのビッグクラブにしたい」

文●松野敏史

※『ワールドサッカーダイジェスト』2020年9月17日号より転載
 
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