【連載】小宮良之の『日本サッカー兵法書』 其の七「銭と浪漫」

カテゴリ:特集

小宮良之

2015年02月26日

「三ツ沢だったら、もっとタイトルを獲れていた」。

ドイツサッカーの隆盛と深く関係するスタジアムの発達(写真はアリアンツ・アレーナ)。日本でも、G大阪の新スタジアム建設のような動きが活性化すれば……。(C)Getty Images

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 Jリーグの各クラブは人気向上を目指して奔走し、例えば選手をせっせとイベントに担ぎ出している。それはファン獲得のためのひとつの方法なのかもしれない。しかし、“選手との距離を縮める”というのは、選手の魅力が大衆化するという諸刃の剣でもある。一部ファンの確保にはつながっても、一般的なサッカーファンを多く呼び込むというビジネス感覚からは逆走している。
 
 欧州のサッカークラブは、選手やクラブの価値の低下を恐れる。欧州において、サッカーファンはサッカーのみを観るためにスタジアムにやって来る。例えば年間予算がR・マドリーやバルサの30分の1以下であるエイバルが台頭を見せ、その劇場性に人々は吸い寄せられるのだ。
 
 その観点で見れば、ドイツで起きたサッカー革命も、「最新設備のスタジアムでサッカーが観やすい環境を作った」という点にあるだろう。Jリーグでも、単純にサッカー専用スタジアムが増えれば、人気向上、実力向上につながる。筆者は、その環境作りしか、抜本的な解決方法はないと考える。G大阪の新スタジアム構想にはtotoから助成金として30億円の工費が賄われるらしいが、こうした動きをもっと活発にするべきだ。
 
「(サッカー専用スタジアムの)三ツ沢だったら、マリノスはもっとタイトルを獲れていた」
故・松田直樹の言葉だが、選手がスタンドの熱気を間近に感じられるかどうかは大きな意味を持つ。
 
 サッカーの質とスタジアム。その両輪が着実にファンを増やすだろう。
 
 いよいよJリーグが開幕するが、2ステージ制+優勝決定プレーオフという新方式で正当な王者は誕生するのだろうか。J1昇格プレーオフにおいては、毎年J2の下位チームが勝ち進んでいるのが現状だ。優勝の正当性が危ぶまれるようなら、銭の動きが滞るだけでは収まらない。
 
こみや・よしゆき/1972年、横浜市生まれ。大学在学中にスペインのサラマンカ大に留学。01年にバルセロナへ渡りライターに。選手のみならず、サッカーに全てを注ぐ男の生き様を数多く描写。近著に『おれは最後に笑う』(東邦出版)。
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