若さとスピードで違いを作り出したモナコ。

カラスコに独走を許し、アーセナルは決定的な3点目を献上。1点を追うアディショナルタイムだったとはいえ、第2レグを見据えてリスク管理を怠るべきではなかったか。 (C) REUTERS/AFLO
4)さらなる墓穴を掘った3点目
2点目を喫してさらに切羽詰まった60分、ヴェンゲル監督はそこまで3度の決定機を外していたジルーに代えてウォルコットを、68分には中盤で攻守のバランスを取っていたコクランを下げてより攻撃的なチェンバレンを投入。さらに前がかりに攻撃の圧力を高めようと試みる。
そこからの残り20分余りは、アーセナルがほぼ一方的に攻め立てる展開になった。しかしモナコのコンパクトな守備ブロックをなかなかこじ開けることができず、CKのクリアボールを拾ったチェンバレンのミドルシュートで一矢を報いたのは、時計がちょうど90分を回ってから。
しかしここでアーセナルはまたも、軽率極まりない失態を犯してしまう。無謀な押し上げでカウンターを許し、途中出場のカラスコを独走させて致命的な3点目を許してしまったのだ。まだ敵地での90分がまるまる残っていることを考えれば、これもあまりにナイーブな失点と言わざるを得ない。
リスクを冒して攻撃することが必要な場合もあるが、そうした時にもそのリスクは可能な限りヘッジしておくべきだ。その観点からすれば、平均以下のスピードしか持たないメルテザッカー、コシエルニーというCBペアが敵陣まで押し上げて、爆発的なスピードを誇るカラスコやマルシアルに簡単に独走を許すこと自体、戦術設計そのものの欠陥だという見方もできるが……。
5)若さとスピードで違いを作り出したモナコ
CBのカルバリョとラッジ、ボランチのトゥラランというチームの中核をなすセンターラインをそれぞれ故障と出場停止で丸々欠いたモナコは、基本の4-3-3ではなく中盤を2ボランチとしてフィルターを厚くした4-4-1-1でこの試合に臨んだ。
ピッチに立った11人は、右SBのA・トゥーレが96年生まれの18歳、左MFのマルシアルが95年まれの19歳、CBワラスが94年生まれ、2ボランチのコンドグビアとファビーニョがともに93年生まれと、U-21世代がフィールドプレーヤーの半数を占める、際立って若いラインアップ。
彼らがモウチーニョ、ディラール、ベルバトフといった中堅・ベテランとともに組織のメカニズムの中で献身的に機能し、寄せの速さやイーブンボールの競り合いで優位に立ったことが、アーセナルに主導権を渡しながらも自由な攻撃を許さない堅守の支えとなった。
攻撃で違いを作り出したのは、マルシアルとカラスコ(こちらも93年生まれ)の爆発的なスピード。前者はコシエルニー、後者はメルテザッカーを嘲笑うようにぶっちぎって独走し、それぞれ2点目を演出、3点目を奪った。
カラスコの投入が当たった采配も含めて、レオナルド監督の戦術設計はほぼ完璧だったと言えるだろう。
文:片野道郎
2点目を喫してさらに切羽詰まった60分、ヴェンゲル監督はそこまで3度の決定機を外していたジルーに代えてウォルコットを、68分には中盤で攻守のバランスを取っていたコクランを下げてより攻撃的なチェンバレンを投入。さらに前がかりに攻撃の圧力を高めようと試みる。
そこからの残り20分余りは、アーセナルがほぼ一方的に攻め立てる展開になった。しかしモナコのコンパクトな守備ブロックをなかなかこじ開けることができず、CKのクリアボールを拾ったチェンバレンのミドルシュートで一矢を報いたのは、時計がちょうど90分を回ってから。
しかしここでアーセナルはまたも、軽率極まりない失態を犯してしまう。無謀な押し上げでカウンターを許し、途中出場のカラスコを独走させて致命的な3点目を許してしまったのだ。まだ敵地での90分がまるまる残っていることを考えれば、これもあまりにナイーブな失点と言わざるを得ない。
リスクを冒して攻撃することが必要な場合もあるが、そうした時にもそのリスクは可能な限りヘッジしておくべきだ。その観点からすれば、平均以下のスピードしか持たないメルテザッカー、コシエルニーというCBペアが敵陣まで押し上げて、爆発的なスピードを誇るカラスコやマルシアルに簡単に独走を許すこと自体、戦術設計そのものの欠陥だという見方もできるが……。
5)若さとスピードで違いを作り出したモナコ
CBのカルバリョとラッジ、ボランチのトゥラランというチームの中核をなすセンターラインをそれぞれ故障と出場停止で丸々欠いたモナコは、基本の4-3-3ではなく中盤を2ボランチとしてフィルターを厚くした4-4-1-1でこの試合に臨んだ。
ピッチに立った11人は、右SBのA・トゥーレが96年生まれの18歳、左MFのマルシアルが95年まれの19歳、CBワラスが94年生まれ、2ボランチのコンドグビアとファビーニョがともに93年生まれと、U-21世代がフィールドプレーヤーの半数を占める、際立って若いラインアップ。
彼らがモウチーニョ、ディラール、ベルバトフといった中堅・ベテランとともに組織のメカニズムの中で献身的に機能し、寄せの速さやイーブンボールの競り合いで優位に立ったことが、アーセナルに主導権を渡しながらも自由な攻撃を許さない堅守の支えとなった。
攻撃で違いを作り出したのは、マルシアルとカラスコ(こちらも93年生まれ)の爆発的なスピード。前者はコシエルニー、後者はメルテザッカーを嘲笑うようにぶっちぎって独走し、それぞれ2点目を演出、3点目を奪った。
カラスコの投入が当たった采配も含めて、レオナルド監督の戦術設計はほぼ完璧だったと言えるだろう。
文:片野道郎