• トップ
  • ニュース一覧
  • “フラット3の申し子”を襲った悲運…森岡隆三が日韓W杯で抱いた苦悩と感謝【日本代表キャプテンの系譜】

“フラット3の申し子”を襲った悲運…森岡隆三が日韓W杯で抱いた苦悩と感謝【日本代表キャプテンの系譜】

カテゴリ:連載・コラム

元川悦子

2020年05月18日

黒子に徹するベテランの姿を見てキャプテンとしてやるべきことを再認識

フラット3の中心で最終ラインを統率した森岡。初戦で負傷離脱するアクシデントに見舞われた。(C) Getty Images

画像を見る

日本は鈴木、稲本(5番)のゴールで初戦を2-2の引き分けで終えた。(C) Getty Images

画像を見る

 そしてもうひとつ大きいのは、看板戦術である「フラット3」の司令塔という部分。2011年に松田直樹が急逝した際に来日したトルシエが「フラット3は森岡、松田、宮本(恒靖=G大阪監督)、中田浩二(鹿島CRO)にしかできない戦術」と断言していたが、それだけ彼らには絶大な信頼を寄せていた。中でもラインコントロールを託される森岡の存在価値は大きかった。「監督がトルシエじゃなきゃ、俺は呼ばれていなかった」と本人も述懐していたが、彼らは目に見えない強い絆で結ばれていたのだ。

 ところが、森岡にとって夢舞台であるはずのベルギー戦は悲劇の場となってしまう。鈴木隆行(解説者)と稲本潤一(相模原)のゴールで2-1とリードしていた72分、相手との接触から左足裏がズキズキと痛み出し、ひざ下の感覚がなくなるというアクシデントが発生したのだ。ドクターはいったんOKを出したが、違和感は拭えず、自ら交代をアピールする羽目になった。そこからフラット3の中央は宮本が担うことになり、森岡はピッチから遠ざかった。

 初戦を2-2の引き分けで終えたことには安堵感を覚えたという森岡だったが、満足にプレーできない状況は続いた。さまざまな病院へ出向いて検査しても原因を突き止められず、あらゆる治療も効果はない。チームは横浜でロシアに1-0で勝ってワールドカップ初勝利を挙げ、活気に満ち溢れているのに、自分はキャプテンらしい仕事もできない……。苛立ちは募る一方だった。練習中のレクリエーションゲームで「ゴール決めろよ」と冗談交じりに言ってきた小野伸二(琉球)に激高してしまうほど、メンタル的に追い込まれていた。

 そんな彼を救ったのが中山、秋田豊(盛岡監督)、森島寛晃(セレッソ大阪社長)らベテラン勢だった。主力から外れていた30代トリオは、大会を通してサポート役に回ることが多かった。98年フランス大会惨敗の悔しさがある分、2002年日韓大会でリベンジしたい思いは人一倍強かったはずだが、思うように出番は訪れない。そんな悔しさを決して表に出すことなく、チームのために黒子に徹する姿を目の当たりにして、キャプテンは自分のやるべきことを再認識できたという。

「みんなスタートから出られないのに、雑務とかを率先してやっていました。僕のことも気遣ってくれて、どれだけ助けられたか分かりません」
 
【関連記事】
【日本代表 隠れ名勝負】世界を相手に指揮官も驚愕!絶頂の加茂ジャパンが披露した戦後最大の逆転劇!
カズ落選、アトランタ世代の台頭…井原正巳はW杯初出場チームをどうまとめ上げたのか?【日本代表キャプテンの系譜】
「サッカーが嫌いに…」「物凄く辛かった」7か月で終焉したファルカンJAPANの真相【名勝負の後日談】
27年前の5月16日、Jリーグ初のハットトリックはこうして生まれた【名勝負の後日談】
【W杯アジア予選を突破した日】輪の中心にはカズがいた…ジョホールバルでドーハ組はいかに振る舞ったか?

サッカーダイジェストTV

詳細を見る

 動画をもっと見る

Facebookでコメント

サッカーダイジェストの最新号

  • 週刊サッカーダイジェスト なでしこJに続け!
    4月10日発売
    U-23日本代表
    パリ五輪最終予選
    展望&ガイド
    熾烈なバトルを総力特集
    詳細はこちら

  • ワールドサッカーダイジェスト 世界各国の超逸材を紹介!
    4月18日発売
    母国をさらなる高みに導く
    「新・黄金世代」大研究
    列強国も中小国も
    世界の才能を徹底網羅!!
    詳細はこちら

  • 高校サッカーダイジェスト 高校サッカーダイジェストVo.40
    1月12日発売
    第102回全国高校選手権
    決戦速報号
    青森山田が4度目V
    全47試合を完全レポート
    詳細はこちら

>>広告掲載のお問合せ

ページトップへ