【番記者コラム】クラブを変えた出来事――名古屋グランパスを真の勝者へ導いた“闘将”

カテゴリ:Jリーグ

今井雄一朗

2020年04月23日

2010年に光ったのが鉄壁の守備陣

盟友・楢﨑と抱擁を交わす闘莉王。ふたりを擁した守備陣は実に強固だった。(C)SOCCER DIGEST

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 今までにも幾度となく書いてきたことだが、CBの位置からあそこまで試合を支配する選手をこれまで見たことがない。攻撃が得意な、ビルドアップが得意なCBは数あれど、まるで中盤の選手がするようにゲームメイクをしてしまう。

 優勝した2010年に印象的だったのは鋭いロングフィードで、玉田や金崎に1対1の場面を提供し、ケネディの高さを活かしきることで劣勢もすぐに跳ね返していた。守備力の高さは言わずもがな、パートナーの増川隆洋の潜在能力を引き出してベストイレブンとなる活躍を導き、家族のように慕う楢崎正剛との阿吽の呼吸で鉄壁の守備を築き上げた。

 2010年はチームの総得点は54得点と平凡だが、37失点はリーグ3位の少なさで、決して連敗をしない勝負強さを見せた名古屋は実に23勝を挙げている。8敗をしながら2位に10ポイント差をつける勝点72という驚異的な数字は、守備の安定感と攻撃への切り替えのスムーズさ、確かさがあったからに他ならない。

 また、当時の名古屋には闘莉王が活躍できる素地があったことも幸運だった。キャラクターの強さが良くも悪くも出てしまう選手だったが、チームを束ねていたのは「オレ、ミスターのこと好きだからね」と尊敬して止まないストイコビッチ監督で、キャプテンには良き兄貴分の楢崎、久米一正GM(当時)も大好きな人物の一人だった。小川や巻佑樹らをはじめ自らを慕う後輩も多く、公私ともに充実した環境があったことで、Jリーグ史上屈指のタレントがいかんなく力を発揮できたのは間違いない。

優勝の瞬間はピッチの外で迎えたが、喜びを爆発させた。(C)SOCCER DIGEST

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2016年には残留争いを戦っていたチームに電撃復帰。味方を叱咤激励した。(C)SOCCER DIGEST

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 そして2010年の名古屋は8月14日の第18節、ホーム豊田での浦和戦の勝利で首位に立って以来、一度もその座を明け渡すことなく第31節で優勝を決めた。

 3-1で勝利した浦和戦の先制点は闘莉王の豪快なヘッド。古巣からの初得点にゴールセレブレーションはなかったが、魂のこもったゴールで試合を動かした背番号4に応えるようにして、チームは順位表の一番上に立った。

 ちなみに優勝を決めたアウェー湘南戦は闘莉王は負傷によりスタンド観戦となったが、ベンチスタートの杉本恵太にアドバイスを送り、見事決勝アシストを“アシスト”するなどここでも影響力を発揮している。ピッチにいてもいなくても、練習でも試合でも、チームを勝たせる仕事ができる存在として、彼はまさしく優勝への“ラストピース”だった。

 闘莉王と名古屋グランパスの冒険はその後も2016年まで約7年間、少しの間を挟んで続いた。2016年に無所属のままブラジルで待ち、チームの危機に着の身着のままで地球の裏側からやってきてくれた際の感動もまた記憶に新しいが、名古屋に大きな変化と結果をもたらした2010年の活躍はやはり何にも勝るインパクトがある。「オレは守備を守っていると思っていない」と語り、FWでも1試合4得点をマークした全能のプレーヤーは、名古屋のクラブ史にその名を今も、燦然と輝かせている。

取材・文●今井雄一朗(フリーライター)
 
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