「まだチャラじゃないからな」
中学時代から谷内田を知る谷口哲朗総監督はこう話す。
「一昨日の試合は良いプレーができなかったので外した。今日あっさりと挽回するのは、彼の持っているスター性だと思う。ただ、まだまだ成長してもらわないといけないので、まだ飴は与えなくてもいいし、もう少し鞭を与えたほうがいい(笑)。交代したからといって、ヘコむようではプロに行けないし、それは彼も理解している。彼に求める水準は高い。うちのチームではキャプテンとしても物足りない。今日は奮起してくれたので良かった」
外されてもただでは転ばないあたりは、流石の一言。思い返せば、今年は2月にプロ入りが決まり、京都の練習に許す限り参加した。総監督が「真面目なんですよ」と話すとおり、本職ではないウイングバックを任されても前向きに取り組んだ。
「練習参加に行くだけで学ぶことは多かったので、そのポジションをやって良かったです。ウイングバックとボランチで見る景色が違ったので次に繋がった」(谷内田)
どんな状況でも学びの姿勢を崩さない――。そのスタンスは帝京長岡でも同じ。だからこそ、大舞台で途中交代を命じられても腐らなかった。
次なる相手は青森山田。試合後に仲間からは「準々決勝でゴールを奪っても、まだチャラじゃないからな」と声を掛けられた。本人もこれで終わるつもりはない。「強いイメージしかない。青森山田を倒してこその日本一だと思っている。本当に良い相手」と言い切った谷内田に満足感はない。
取材・文●松尾祐希(フリーライター)
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