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「立て! 絶対に俺が止めてやる!」8人目のPK失敗で泣き崩れたCBと守護神の熱き感動秘話【選手権】

カテゴリ:高校・ユース・その他

川原 崇(高校サッカーダイジェスト)

2020年01月03日

「悔しさと申し訳なさで頭が真っ白になった」

茫然自失となった中川原に声をかける佐藤文。ふたりの熱い想いが交錯した。写真:金子拓弥(サッカーダイジェスト写真部)

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 壮絶なるロシアンルーレットだった。

 1月3日に等々力陸上競技場で行なわれた全国高校サッカー選手権3回戦、仙台育英(宮城)vs日大藤沢(神奈川)の一戦は、両チームとも決め手を欠き、0-0のままPK戦に突入した。そこでも双方一歩も譲らず、キッカー7人目まですべてが成功。先行の仙台育英で8番目のキッカーを務めたのが、3年生のCB中川原樹だった。

 そして背番号5が放った渾身のショットは、相手GK濵中英太郎に読まれ、ものの見事に阻止されてしまう。しゃがみこんで泣き崩れる中川原。「悔しさと申し訳なさで頭が真っ白になった」と振り返る。

 今大会の1回戦、五條(奈良)とのゲームで中川原は退場処分を食らった。2枚目は相手への厳しいチャージで受けた警告だが、いただけなかったのは1枚目だ。0-1で迎えた後半18分に仙台育英はFW佐藤遼のゴールで同点に追いつくのだが、中川原は喜びのあまり、応援スタンドによじ登ってサッカー部員たちとハイタッチをしてしまった。あまりにも軽率なイエローカードである。

 チームは10人となりながらも、PK戦でGK佐藤文太が2本を阻止し、見事2回戦に進出。その高川学園(山口)戦は当然、中川原は出場停止でスタンド観戦。代役で先発出場したDF大塚俊輝に対して、「急に出ることになってトシキがプレッシャーで押しつぶされそうになっていた。それでも頑張ってくれて本当に嬉しかったです」(中川原)と感謝を口にする。チームは1-0で辛くも勝利し、ベスト8を懸けた日大藤沢戦に臨んだ。

 
 試合前、中川原は意を決していた。「1回戦で退場になったぶんを取り返す。完封できたし、PKのところではこれを俺が決めて、相手にプレッシャーを掛けるんだと……。でも、無茶苦茶甘いコースに行ってしまった。どうしたらいいのか分からず、ただ、立ち上がれませんでした」と回顧する。

 そんな中川原に歩み寄り、声をかけたのはほかでもない、同じ3年生の守護神・佐藤文だった。中川原は「立て! 絶対に俺が止めてやるから!」と勇気づけられ、仲間に抱きかかえられながら、ハーフウェーラインへと戻った。そしてその直後、決まれば終わりのショットを、佐藤文は鮮やかにセーブしてみせる。それを見た中川原はふたたび、ピッチに倒れ込んで泣き崩れた。
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