苦境に喘ぐジェフを救うために――佐藤勇人が示す覚悟と献身ぶり

カテゴリ:Jリーグ

赤沼圭子

2019年09月19日

「守」から「攻」へのスピードを上げるために――

ボランチとしてチームをコントロール。黒子役として仲間を支える。(C)SOCCER DIGEST

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 その町田戦は1-1で連敗を止めたが、続く新潟戦は1-2の敗戦。佐藤が3試合連続スタメンで挑んだ前述の32節・水戸戦は、18位のチームが危機的な状況から脱するためにも、台風15号で被災した千葉県民に勇気を与えるためにも勝利が必要だった。佐藤は可能な限りダイレクトパスでスピーディーに展開した。
 
「自分たちは『守』から『攻』になった時がすごく遅いので、そのパワーとスピードを活かすためにはワンタッチ(パス)が必要だと思う。ボールを奪ったあとにワンタッチ(パス)で展開することによってスピードも上がるので、なるべくシンプルに有効なワンタッチ(パス)でやりたいなと思っていた」
 
 その効果もあって千葉はリズムよく攻めた。水戸に先制されて迎えた39分にはクレーベのゴールで1-1に追いつき、PKを決めれば逆転という60分の場面では、PKキッカーのクレーベにプレッシャーをかけようとする水戸のGKの松井謙弥の前に、佐藤は立ちはだかった。
 
「もちろん相手チームはクレーベにプレッシャーを与えると思う。でも、あのPKはクレーベが蹴ってくれたけど、チームのものだし、そのチームのものを背負ってクレーベが蹴ってくれているので。なるべくクレーベには変な影響がないように、クレーベにも『みんなで点を取りに行くんだ』というのが伝わるようにと思った」
 
 クレーベは落ち着いてPKを決め、その後、チームは水戸の反撃を受けるも、苦しい時間帯を耐え切って、7試合ぶりに勝点3を得た。佐藤は試合出場が危ぶまれるほどの痛みがある箇所を抱えながらも、試合終了の直前まで最前線へ走ってボールを追い、球際で身体を張って、攻守にアグレッシブなプレーを見せ続けた。
 
「自分も千葉県民としてパワーをもらいました。チームはまだ厳しい順位にいるので、今日みたいな試合をやってひとつ、ひとつ順位を上げていきたいし、千葉県民の皆さんが少しでも笑顔になれるように、勇気を与えられるようにやっていきたい」
 
 佐藤のように今のチームに必要な要素を考え、実践する献身的なプレーが増えれば、千葉は苦境から脱出できるはずだ。
 
取材・文●赤沼圭子(フリーライター)
 
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