育成クラブとしての台頭
今回獲得した選手らは実績があり、他クラブからもオファーが届いていたという。競合したクラブはいずれも水戸と比べて資金力が豊富で、先述のようにいくら経営が安定したとはいえ、条件面では不利な状況にあった。それでも彼らは水戸を選んだ。
その理由を小川はこう語る。
「水戸で活躍した選手が世界に行ったり、日本代表になったりしている、飛躍の場になるクラブだと強く感じています。僕もそのひとりになれればな、と」
近年では17年に水戸でプレーした前田大然(現・マリティモ/ポルトガル)がその例だろう。爆発的なスピードを活かしてゴールを量産し、一躍注目を浴びた。その後、世代別の代表に選出されるようになり、今年の6月に開催されたコパ・アメリカでA代表デビューし、今夏にはマリティモに移籍。世界へ羽ばたいた前田は「育成の水戸」を強く印象付けた存在となった。
その理由を小川はこう語る。
「水戸で活躍した選手が世界に行ったり、日本代表になったりしている、飛躍の場になるクラブだと強く感じています。僕もそのひとりになれればな、と」
近年では17年に水戸でプレーした前田大然(現・マリティモ/ポルトガル)がその例だろう。爆発的なスピードを活かしてゴールを量産し、一躍注目を浴びた。その後、世代別の代表に選出されるようになり、今年の6月に開催されたコパ・アメリカでA代表デビューし、今夏にはマリティモに移籍。世界へ羽ばたいた前田は「育成の水戸」を強く印象付けた存在となった。
ただ、それは偶然ではない。西村強化部長は就任した16年から常に「選ばれるクラブにしないといけない」と語り、資金力で他クラブを上回れないなかで、必然的に育成の組織作りに尽力してきた。
例えば、廃校を利用し、昨年完成した練習施設「アツマーレ」(公民館などとの複合施設)。天然芝のピッチ2面やトレーニングジムなどが揃い、その恵まれた環境を最大限に活かそうと様々な取り組みが行なわれている。
映像室という部屋で選手たちが試合の分析に取り組めば、毎週のように様々な分野のスペシャリストを招いてワークショップを行なう選手の知識習得・人材育成プログラムの「Make Value Project」も開催するなど、いろんな角度から選手を成長させる仕組みを作っている。
そして「個性を最大限に活かす」を信念としている長谷部茂利監督の存在も大きい。今夏に加入した選手は、個々の特長を伸ばしながらも、結果を出すクラブの在り方を見て「水戸でプレーしたい」と移籍を決断したという。
「選ばれるクラブ」として存在感を増していることを証明した今夏の補強となった。
取材・文●佐藤拓也(フリーライター)
※『サッカーダイジェスト』9月12日号(8月22日発売)より転載