7戦未勝利の風間グランパスに生じた誤差。試合を支配したのに0-2で敗れた理由は…

カテゴリ:Jリーグ

今井雄一朗

2019年07月09日

クロスなどの“オプション”は散漫なだけの攻めになってしまう

 要するに、名古屋は自らストロングポイントを封じ込め、効果は見込めてもあまりやったことのない攻撃で何とか反撃の糸口をつかもうとしていたわけである。もちろん、湘南は名古屋対策もきっちりと絞り込んでおり、相手のアタッキングサードの守備はかなりの人数と密度を保って対応してはいた。だからこそ相手の嫌がることをとジョーの強さを前面に押し出した意図は理解できる。
 
 ただ、その戦法を最大化する努力をしていたかと言えば疑問符をつけざるをない。前述したように前田や相馬がどれだけクロスを上げても先に触るのは湘南の選手で、G・シャビエルのコーナーキックやフリーキックは手前で引っ掛かることが多すぎた。ミドルシュートの一発でも見せれば守備の出方も変わろうものだが、ボールはゴール前を固める相手の周りを動き回るばかり。ペナルティエリアの攻略という自分たちらしさを追求したいのであれば、その流れからエリア内での連係を出していかないことにはクロスなどの“オプション”は散漫なだけの攻めになってしまう。
 
 印象的なのがハーフタイムの両監督の指示だ。決定機を仕留めること、前進を意識すること、落ち着いて攻めること、という一貫した指令を出し続ける風間八宏監督に対し、曺貴裁監督は自分たちのトレーニングを信じろ、苦しい時を我慢して凌いでもう1点取ろうとハッパをかけている。もちろん指示はこれだけではないだろうが、現状認識と未来予測において曺監督の選んだ言葉は実に適切だったと言える。
 

 後半の45分間は名古屋がほとんどの時間帯で試合を支配し、相手の4倍に及ぶシュートを記録した。しかし結果は名古屋の得点がゼロで、相手が攻め疲れを起こした瞬間に集中力を維持した湘南が見事なカウンターパンチを浴びせて追加点を奪っている。
 
 この点、名古屋に足りないのはもしかすると、集中力ではなく広い意味での忍耐力なのかもしれない。守備だけでなく、じわりじわりと追い詰めていく攻撃の展開の中で辛抱強く“その時”を待てるか。そしてその瞬間を見逃さないか。決定機を仕留めるとは、決定機を迎えた時に自分をどれだけ冷静に保てるかにかかっている。とあるクラブOBの言葉を思い出す。「サッカーとは、どれだけ判断を待てるかなんだ」。湘南に敗れ去った名古屋には、焦りと安易な判断ばかりが充満していたように思える。
 
 7戦勝ちなし、3連敗という現状は泥沼とまでは言えないが、勝てない、うまく戦えないというピッチ上の有様は早急に改善せねば足下がおぼつかなくなってくる。週2回の過密日程がようやく終わり、1日のオフを挟んで再始動するチームが打つ次の一手はどこにあるか。指揮官の手腕も、選手たちの底力も、その双方が試される時期を名古屋は戦っている。
 
取材・文●今井雄一朗(スポーツライター)
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