プラント施策の最適の組み合わせを見つけること

今シーズンのCLはリバプールに敗れて16強止まり。育成を重視しながらも、同時にドイツ一の強豪としてイングランドやスペインやビッグクラブと渡り合うことも求められるという、何とも難しい立場にある。 (C) Getty Images
選手が思ったより成長しなかった、という見方もあるだろう。だが、成長させるための環境をどこまで用意できたかも、考えられなければならない点だ。
例えば、今冬に唯一獲得したカナダ代表MFのアルフォンソ・ディビス(←ホワイトキャップス)は、首脳陣から非常に高い評価をされている。
スポーツディレクターのハサン・サリハミジッチは、「彼はダイアモンドの原石だ。本当に、よくトレーニングしている。いつでも全力だ。毎日のトレーニングで、その資質を示しているよ。私がこれまで見てきた選手のなかで、最速のひとりだ。ひょっとしたら今、ブンデスリーガで最速かもしれない」と、そのスピードに無限大の可能性を感じている。
例えば、今冬に唯一獲得したカナダ代表MFのアルフォンソ・ディビス(←ホワイトキャップス)は、首脳陣から非常に高い評価をされている。
スポーツディレクターのハサン・サリハミジッチは、「彼はダイアモンドの原石だ。本当に、よくトレーニングしている。いつでも全力だ。毎日のトレーニングで、その資質を示しているよ。私がこれまで見てきた選手のなかで、最速のひとりだ。ひょっとしたら今、ブンデスリーガで最速かもしれない」と、そのスピードに無限大の可能性を感じている。
だが成長するのに必要なのは、自分と向き合う時間と、プレーして成功経験を積み重ねていく機会だ。それが、今のバイエルンにあるだろうか。
セカンドチームで試合に出ることはあるが、4部リーグ所属だ。CL上位を常に狙うチームでプレーすることになる選手が経験を積むべき場としては、十分ではない。
かつて、フィリップ・ラームが経験を積んだのは、当時1部リーグの強豪だったシュツットガルト。トニ・クロースがプレーしていたレーバークーゼンは、CLの常連だった。そこでレギュラーとしての経験が積めるという最適なルートがあったからこそ、彼らはステップアップを遂げることができた。
現在のメンバーだと、セルジュ・ニャブリがそうだろう。ブレーメン所属時に獲得し、1年間、ホッフェンハイムにレンタルで武者修行に出した。そして今や、チームの新機軸となっている。こうした動きが、一過性のものであってはダメなのだ。
チームが過渡期にある今だからこそ、将来的なチームプランをしっかりとフロントが描いて、そのための補強策と育成策、発展策と照らし合わせていく。そのなかで、最適な組み合わせを探し出し、作り出せた時、バイエルンは数年後、さらに1段階も2段階も上の高みに到達することができるだろう。
文:中野 吉之伴
【著者プロフィール】
なかの・きちのすけ/1977年7月27日生まれ。秋田県出身。武蔵大学人文学部欧米文化学科卒業後、育成層指導のエキスパートになるためにドイツへ。2009年7月にドイツ・サッカー協会公認A級ライセンス獲得(UEFA−Aレベル)。SCフライブルクU-15チームで研修を積み、2018-19シーズンからは元ブンデスリーガクラブのフライブルガーFCでU16監督を務める。「世界王者ドイツ年代別トレーニングの教科書」(カンゼン)、「ドイツの子どもは審判なしでサッカーをする」(ナツメ社)執筆。オフシーズンには一時帰国して「グラスルーツ指導者育成」「保護者や子供のサッカーとの向き合い方」「地域での相互ネットワーク構築」をテーマに、実際に現地に足を運んで様々な活動をしている。