なぜ点取り屋はオフサイドにならないのか?
<遠いサイドのDFと駆け引きする>
それは、優れた点取り屋の戦術センスである。目の前の相手選手を囮にして、DF同士の間隙を作って狙う。個人の判断だけでなく、集団の判断にすることで複雑化させ、攪乱するのだ。
これぞ、戦術の極みである。
それは、優れた点取り屋の戦術センスである。目の前の相手選手を囮にして、DF同士の間隙を作って狙う。個人の判断だけでなく、集団の判断にすることで複雑化させ、攪乱するのだ。
これぞ、戦術の極みである。
バルセロナのウルグアイ代表FW、ルイス・スアレスもその名手である。スアレスというと、「噛みつき事件」に代表されるように、獰猛で粗野な印象が強いかもしれないが、実は知恵を働かせて動くストライカーの典型である。
直前のプレーで、味方の裏を突いた動きに外側のDFが引きずられたのを感覚で察知し、見るともなく見て、裏に抜け出すことができるのだ。
この点、ヴィッセル神戸のダビド・ビジャもまさに同類だろう。大柄でないし、俊足、超絶技巧もないビジャだが、それでも得点を量産できてきたのは、裏に抜けるボールの呼び込みで、オフサイドにならない、という戦術を極めているからだ。
局面で勝てるか――。戦術とは、どうにもならない状況で奇跡を生み出すことができる道具だ。
文:小宮 良之
【著者プロフィール】
こみや・よしゆき/1972年、横浜市生まれ。大学在学中にスペインのサラマンカ大に留学。2001年にバルセロナへ渡りジャーナリストに。選手のみならず、サッカーに全てを注ぐ男の生き様を数多く描写する。『選ばれし者への挑戦状 誇り高きフットボール奇論』、『FUTBOL TEATRO ラ・リーガ劇場』(いずれも東邦出版)など多数の書籍を出版。2018年3月には『ラストシュート 絆を忘れない』(角川文庫)で小説家デビューを果たした。