過度に注目された選手は、いつしかストレスを覚えるようになる。良い気分だけではいられない。そこで、とにかくプレーに集中しようとするが、“壁を”壊して入り込んでくる外野の声により、得体の知れない熱に浮かされたようになる。これは、いくらシャットダウンしようとしても、し切れない。
「何で、自分がそこまで注目されているのか、分からなかった。(中村)俊輔さんと比較されたり、日本代表のエース候補とか、飛躍し過ぎていて……。褒められるのは嬉しかったけど、居心地が悪くて、どうしていいか分からなかったですね」
高校時代との落差に苦しみ、自信を失う…
拙著『アンチ・ドロップアウト』(集英社)に収録したルポで描いた、阿部祐大朗(2002年から横浜F・マリノスなどでプレーしたFWで11年に27歳で引退)はそう語っていた。桐蔭学園の選手として、高校選手権には3年連続で出場。U-17、U-20でも世界大会に出場している。いわゆる、期待のルーキーだった。
しかし、プロに入ると、まるで勝手が違ったという。高校年代までは自分が中心選手で、周りに頼られることが多かったが、プロでは実力が伯仲。経験も、実力も上の先輩選手たちがいた。高校時代との落差に苦しみながら、自信を失う……。
「超高校級」
それはよく使われる言葉だが、プロに入ったら、「高卒Jリーガー」のひとりに過ぎないのである。
文:小宮 良之
【著者プロフィール】
こみや・よしゆき/1972年、横浜市生まれ。大学在学中にスペインのサラマンカ大に留学。2001年にバルセロナへ渡りジャーナリストに。選手のみならず、サッカーに全てを注ぐ男の生き様を数多く描写する。『選ばれし者への挑戦状 誇り高きフットボール奇論』、『FUTBOL TEATRO ラ・リーガ劇場』(いずれも東邦出版)など多数の書籍を出版。2018年3月には『ラストシュート 絆を忘れない』(角川文庫)で小説家デビューを果たした。