支払い期限は過ぎ、FIFAを巻き込む事態に?
こうして事態は対話もないまま膠着してしまう。ナントは国際サッカー連盟(FIFA)の選手移籍とステータスに関する規定を拠り所とするしかなくなったのだ。支払いに遅滞があった場合、「債権者は支払いの欠如を文書により債務クラブに通知したうえで、後者の財政諸義務に適うよう、少なくとも10日間の支払い猶予期間を与えねばならない」とされる規定だ。
この規定にもとづきナントは、2月5日に書簡を送付。だがカーディフからは返事も支払いもないまま、2月15日、10日間の猶予期限も切れてしまった。
したがって、もしこのままカーディフがなんら行動を起こさない場合、ナントはFIFA紛争解決院にこの一件をもちこむことができる。そうなればカーディフが制裁処分を科せられる事態もあり、処分の中身も「予告」「戒告処分」「罰金処分」「選手獲得禁止処分」などが想定される。
カーディフ側は、「払わない」とは一度も言っていない。ただ、態度が不明瞭なのも事実だ。
この規定にもとづきナントは、2月5日に書簡を送付。だがカーディフからは返事も支払いもないまま、2月15日、10日間の猶予期限も切れてしまった。
したがって、もしこのままカーディフがなんら行動を起こさない場合、ナントはFIFA紛争解決院にこの一件をもちこむことができる。そうなればカーディフが制裁処分を科せられる事態もあり、処分の中身も「予告」「戒告処分」「罰金処分」「選手獲得禁止処分」などが想定される。
カーディフ側は、「払わない」とは一度も言っていない。ただ、態度が不明瞭なのも事実だ。
同クラブのメフメト・ダルマン会長は英公共放送『BBC』の番組に登場。かなり意味深長な発言をしている。
「もし契約上、我々に支払い義務があるなら、そうするだろう。我々は名誉あるクラブなのだから。だが、その義務がないならば――しかも(契約には)いくつか異例なものもある場合――私はクラブの利益を守る立場として内容を精査・検討するために、あなた方を待たせることになる。
我々はまだ情報収集の過程にあり、その過程は進行中だ。我々が十分な情報を保持するレベルに到達した際、私たちはナントと向き合って話し合いに応じることになるだろう」
だが、契約のどこに問題があるか調べようとした『L’Equipe』の取材に対して、ダルマン会長は応じなかったという。一部の報道では、操縦を担当したパイロットの資格に不備があったとの指摘があり、ナント側に過失を問う動きもあると報じられているが……。
単なる時間稼ぎなのか、払いたくない一心なのか。それとも本当に契約に疑義があるのか。あるとすればどの部分なのか。またカーディフはサラにちゃんと保険をかけていたのか、いなかったのか。そもそも、こんな痛ましい事故を招いた責任は、誰にあるのか――。真相はまだまだ暗い藪の中だ。
サラの冥福を祈るためにも、フットボールが人間性を失わないためにも、ふたつのクラブは低次元の争いではなく、より崇高なスタンスをもって事態を解決しなければならない。
取材・文●結城麻里