「危機があったが、もう過ぎたこと」と首脳陣

フランクフルト時代とは比べ物にならないほどの重圧や窮屈さ、そして苦労を味わっているであろうコバチ監督。今週末、ホームに迎えるのはニュルンベルクという“勝って当然”の相手だが、観客をどれだけ満足させられるか。 (C) Getty Images
アリエン・ロッベンはベンフィカ戦後、コバチ監督に対して「非常に野心があり、ハードに仕事をする。ただ、はっきりと言わなければならないのは、バイエルンで監督をするというのは、簡単ではないということだ」と理解を示していた。
一方、キャプテンのノイアーはブレーメン戦の後、以下のように語り、チームとしてのあり方を再度アピールしていた。
一方、キャプテンのノイアーはブレーメン戦の後、以下のように語り、チームとしてのあり方を再度アピールしていた。
「僕らはもちろん、監督のためにも戦っているし、自分たち自身のためにも戦っている。そして、クラブのためにもね。だからこそ、それぞれがベストパフォーマンスを出していけるようにやっていく必要がある。
監督は監督の仕事をして、僕らはそれを実践していく。うまくいかない理由を監督だけのせいにするのは、簡単すぎる。僕らはみんな、一緒の船に乗っているんだ。それぞれが、それぞれの責任を担っていかなければならない」
まずは勝利を重ねていく。規律を持ってプレーをする。そこが、再出発のための大事なポイントだった。
ブレーメン戦では終盤、なりふり構わず勝利を目指すことを厭わなかった。クリアのために遠くへと蹴り出し、時間稼ぎをし、リスクを冒さずにプレーしている。
ミュラーは、「勝点3を取ったことが、非常に大事だ。(上位陣から)これ以上、離されないためにもね。勝つために、どれだけ自分たちが戦ったか見てもらえたと思う。ここ数試合から、ちょっと学んだことだ」と語っていた。
試合から数日後、ファンクラブの会合に出席したルムメニゲ取締役は、非常にポジティブだった。
「我々には危機があったが、それももう過ぎたことだ。ブレーメンでは、再びバイエルンらしいプレーを見せられた。多くのゴールチャンスを、もっと得点に結びつけなければならないが、それもいずれ改善されるだろう。ロッカールームにいると、そう感じるんだ。自信と満足感がある。
コバチ監督には、成長していくための時間を与えなければならない。そして、それを我々は与える」
全てがここから好転していくと考えるのは、時期尚早だ。
バイエルンに求められているのは、ただの勝利ではない。美しさ、ダイナミックスさ、柔軟さ、圧倒的な質量……さらには、世代交代も進めていかなければならない。
それでも、0から100まで、急に進んでいけるわけではない。無理に2、3段飛ばしに階段を駆け上がっていこうとして足を踏み外したら、大怪我になる。地道にでも、一段ずつ進んでいくことが大きな進歩に繋がっていくはずである。
おそらく、今はそうした時期なのだ。
文:中野 吉之伴
【著者プロフィール】
なかの・きちのすけ/1977年7月27日生まれ。秋田県出身。武蔵大学人文学部欧米文化学科卒業後、育成層指導のエキスパートになるためにドイツへ。2009年7月にドイツ・サッカー協会公認A級ライセンス獲得(UEFA−Aレベル)。SCフライブルクU-15チームで研修を積み、2018-19シーズンからは元ブンデスリーガクラブのフライブルガーFCでU16監督を務める。「世界王者ドイツ年代別トレーニングの教科書」(カンゼン)、「ドイツの子どもは審判なしでサッカーをする」(ナツメ社)執筆。オフシーズンには一時帰国して「グラスルーツ指導者育成」「保護者や子供のサッカーとの向き合い方」「地域での相互ネットワーク構築」をテーマに、実際に現地に足を運んで様々な活動をしている。