20冠も鹿島にとっては感慨に浸るものではない
想定外があったのも事実だ。土居も昌子も、相手のロングボールが異様に多かったと口をそろえる。そんな慣れない地、慣れないスタイルにも、徐々にかみ合わせていく。気付けば三竿健は安部裕葵に大きなジェスチャーを交えながら指示を出すなど、あちらこちらで意思疎通の場が発生した。
土居は「仲間同士で言い合えるのが大きい。みんなで勝ちたいという気持ちが、いろいろな形で出た結果だと思う」と言う。マカオでの準々決勝第2戦の天津権健(中国)戦、アウェーでの準決勝第2戦の水原(韓国)で発揮した自主性と対応力は、1メートルでも離れれば声の聞こえない絶大な効果を発揮した。これまで支えてきた内田篤人らは故障離脱。犬飼智也らはJ1リーグ戦でのターンオーバーで、チームに休養と勢いを与えた。ピッチ上だけで語れないプレーと貢献は、今の鹿島の一番の強みだろう。
鹿島の選手からは、いわゆる喜びのコメントはないに等しい。それはタイトルを取って当たり前、優勝してなんぼという精神の裏返し。クラブのレジェンド、ジーコテクニカルディレクターが言う「人間は生きるために1日に食事を3回する。クラブはタイトルを取ってお腹を満たす。鹿島というのは、常にその意識でいないといけない」との言葉が浸透しきっている。
Jリーグ、ルヴァンカップ、天皇杯を含めた主要タイトルで、2位のG大阪の9個を大きく引き離す20冠。それでも鹿島にとって、これは感慨に浸るものではない。土居は「ここが始まり。これを機に国内タイトルと同じように、何回も何回も取りたい。この経験をした人たちが、何年たっても発信できるような思いでやれるといい」と話す。脈々と受け継がれる伝統は、勝負にこだわることで芽吹き、栄冠を掴むことで根付いていく。
開いた扉は、世界へと続く。12月にUAEで開催されるクラブワールドカップの出場権を得た。北中米カリブ海代表のグアダラハラ(メキシコ)に勝てば、準決勝ではスペインのレアル・マドリードが待つ。2016年の決勝で屈した巨人だ。「僕たちにとって、リベンジの舞台」と昌子。試合終了から1時間もたたないうちに、早くも次なる大舞台へと目を移す。真っすぐな言葉に、ぶれない土台。未踏の地にも、鹿島らしさが詰まっていた。
取材・文●前川卓也(時事通信)
土居は「仲間同士で言い合えるのが大きい。みんなで勝ちたいという気持ちが、いろいろな形で出た結果だと思う」と言う。マカオでの準々決勝第2戦の天津権健(中国)戦、アウェーでの準決勝第2戦の水原(韓国)で発揮した自主性と対応力は、1メートルでも離れれば声の聞こえない絶大な効果を発揮した。これまで支えてきた内田篤人らは故障離脱。犬飼智也らはJ1リーグ戦でのターンオーバーで、チームに休養と勢いを与えた。ピッチ上だけで語れないプレーと貢献は、今の鹿島の一番の強みだろう。
鹿島の選手からは、いわゆる喜びのコメントはないに等しい。それはタイトルを取って当たり前、優勝してなんぼという精神の裏返し。クラブのレジェンド、ジーコテクニカルディレクターが言う「人間は生きるために1日に食事を3回する。クラブはタイトルを取ってお腹を満たす。鹿島というのは、常にその意識でいないといけない」との言葉が浸透しきっている。
Jリーグ、ルヴァンカップ、天皇杯を含めた主要タイトルで、2位のG大阪の9個を大きく引き離す20冠。それでも鹿島にとって、これは感慨に浸るものではない。土居は「ここが始まり。これを機に国内タイトルと同じように、何回も何回も取りたい。この経験をした人たちが、何年たっても発信できるような思いでやれるといい」と話す。脈々と受け継がれる伝統は、勝負にこだわることで芽吹き、栄冠を掴むことで根付いていく。
開いた扉は、世界へと続く。12月にUAEで開催されるクラブワールドカップの出場権を得た。北中米カリブ海代表のグアダラハラ(メキシコ)に勝てば、準決勝ではスペインのレアル・マドリードが待つ。2016年の決勝で屈した巨人だ。「僕たちにとって、リベンジの舞台」と昌子。試合終了から1時間もたたないうちに、早くも次なる大舞台へと目を移す。真っすぐな言葉に、ぶれない土台。未踏の地にも、鹿島らしさが詰まっていた。
取材・文●前川卓也(時事通信)