最初の大きな「分岐点」が間もなく訪れる

本文では触れられなかったが、香川も戦力のひとりとして、今後は重要な役割を担うことになるかもしれない。タイトルを手にするチームは、全ての選手が常に活躍する準備ができているものである。 (C) Getty Images
躍動しているのは、若手だけではない。ロイスはプレー面だけではなく、キャプテンとしても素晴らしいリーダーシップを発揮。ゴールを量産している新加入のパコ・アルカセルは、すんなり順応できたのはロイスのサポートのおかげと感謝している。
トーマス・ディレイニーとアクセル・ヴィツェルのボランチ・コンビは、チームに欠けていた安定感をもたらし、攻守のバランスは見違えるように改善された。
そしてGKロマン・ビュルキは好セーブを連発し、SBウカシュ・ピシュチェクは経験に裏打ちされた冷静なプレーでチームを落ち着かせている。
トーマス・ディレイニーとアクセル・ヴィツェルのボランチ・コンビは、チームに欠けていた安定感をもたらし、攻守のバランスは見違えるように改善された。
そしてGKロマン・ビュルキは好セーブを連発し、SBウカシュ・ピシュチェクは経験に裏打ちされた冷静なプレーでチームを落ち着かせている。
そしてマリオ・ゲッツェも、ようやく戻ってきた。CLのアトレティコ・マドリー戦、リーガのヘルタ戦と連続スタメン。パコの負傷欠場があったからとはいえ、トップの位置で小気味良い動き出しと正確な技術で何度も攻撃の起点となり、ヘルタ戦では素晴らしいパスでサンチョの先制点をアシストした。
ハンス=ヨアヒム・ヴァツケCEOは、「ファーブルは常に、マリオの能力を信じていた」と話し、ツォルクSDは「マリオについて私が気に入っているのは、出場機会がなかった時でも、誰かを侮辱したり、落ち込んだりすることなく、プロフェショナルな姿勢で取り組んでいたことだ」と明かしていた。
不遇の時代を乗り越えてきた者は強い。今後に向けて間違いなく貴重な戦力になることを、ゲッツェはしっかりと証明してみせた。
全てが噛み合っているように思われる。勢いがあることは間違いない。手応えだってあるだろう。CLでA・マドリーに4-0で勝利したのは、センセーショナルだった。ブンデスリーガがまたスリリングになった、と話すファンの声も喜ばしい。
だが昨シーズンも、7節まではそんな空気があったことを忘れてはいけない。8節でRBライプツィヒに敗れてから“迷子”になりだし、11節のバイエルン戦を落として首位から陥落すると、そこから一気に急降下。相手に対策を練られては、おたおたしてしまった。
11月10日に行なわれる11節では、バイエルンと対戦する。最初の大きなターニングポイントとなるだろう。ドルトムントの立ち位置は、この一戦の後でより鮮明に見えてくる。
いずれにしても、今シーズンはまだ3分の1も終わっていない。まだ、どんなシーズンになるかは分からないのだ。主力に怪我人が出ることだってある。
だからこそ、内容を改善し、それぞれの試合を大事にし、反省や課題を真摯に受け止めていく。レギュラー組だけではなく、今、出場機会が少ない選手も成長できる環境があることが大切なのだ。クラブ全体で、そうした積み重ねがなければならない。
文:中野 吉之伴
【著者プロフィール】
なかの・きちのすけ/1977年7月27日生まれ。秋田県出身。武蔵大学人文学部欧米文化学科卒業後、育成層指導のエキスパートになるためにドイツへ。2009年7月にドイツ・サッカー協会公認A級ライセンス獲得(UEFA−Aレベル)。SCフライブルクU-15チームで研修を積み、2018-19シーズンからは元ブンデスリーガクラブのフライブルガーFCでU16監督を務める。「世界王者ドイツ年代別トレーニングの教科書」(カンゼン)、「ドイツの子どもは審判なしでサッカーをする」(ナツメ社)執筆。オフシーズンには一時帰国して「グラスルーツ指導者育成」「保護者や子供のサッカーとの向き合い方」「地域での相互ネットワーク構築」をテーマに、実際に現地に足を運んで様々な活動をしている。