身体が大きい方が資質はあるように思えるが…

身体が大きいことは利点ではあるが、それだけを重視していたら、イニエスタ(写真)やシャビのような選手は生まれない。実際、偏ったスカウティングによって開花しなかった才能も数多くあるだろう……。 写真:金子拓弥(サッカーダイジェスト写真部)
小説『ラストシュート 絆を忘れない』(角川文庫)で登場する子どもたちのキャラクターを作り上げた時、プロとして成功した選手たちの子ども時代を反映させている。
そこで共通しているのは、彼らの多くが子どもの時に自分と向き合い、自らを見つめ、改善させていた点である。トップレベルで活躍するような選手は、すでに12歳くらいで老成した部分を抱えているのだ。
そこで共通しているのは、彼らの多くが子どもの時に自分と向き合い、自らを見つめ、改善させていた点である。トップレベルで活躍するような選手は、すでに12歳くらいで老成した部分を抱えているのだ。
そこで子どもの本質を見抜くには、指導者側が考えを硬直させてはならない。例えば、スカウティングをした時、身体が大きく、頑健な子どもの方がアスリートとして資質があるように思える。実際、両親の身体の大きさという、遺伝まで気にするケースもある。
しかし、これは一面的に正しくても、一面的には正しくない。
「小さくても活躍している子どもに、まずは着目するべきだ。なぜなら、それだけの能力があって、大きな子どもを技術とスピードで捻っているのだから。それは大人になったとしても、十分通用するはずだ」
これはヨハン・クライフが残した言葉だが、実に奥が深い。ボールゲームを尊んだオランダ人ならでの視点か。
むしろ、小さな子どもに目を向けるべき――発想の転換によって、正解も変化するのだ。
文:小宮 良之
【著者プロフィール】
こみや・よしゆき/1972年、横浜市生まれ。大学在学中にスペインのサラマンカ大に留学。2001年にバルセロナへ渡りジャーナリストに。選手のみならず、サッカーに全てを注ぐ男の生き様を数多く描写する。『選ばれし者への挑戦状 誇り高きフットボール奇論』、『FUTBOL TEATRO ラ・リーガ劇場』(いずれも東邦出版)など多数の書籍を出版。2018年3月には『ラストシュート 絆を忘れない』(角川文庫)で小説家デビューを果たした。