厳しい状況でも違いを生み出せる選手がいる

攻撃の核であるマネは欠場したものの、違いを見せたクリバリ(3番)をはじめ、優れた個々による集団であることを改めて感じさせたセネガル。6月8日にはクロアチアと最後の調整を行なう予定だ。 (C) REUTERS/AFLO
慣れないやり方での試合に加え、スタメン当落線上にいる選手にすれば、ポジション奪取にアピールしようという意欲も重なってくる。例えばトップ下で出場のエムバイ・ニアングはその意識が強すぎたのか、強引な単独勝負を仕掛けて自滅することが多かった。
こうした展開にもシセ監督は、「(ボスニア戦で試した)3バックでやるとは言っていない。サッカーでシステムを変えることはよくあることだし、親善試合なので、他にも試したかった。合宿を始めてすぐの試合だから、満足している。選手にプレー時間を与えることもできた」と落ち着いて答えていた。
この試合における目的は、しっかりと果たせたのだろう。テストマッチでテストをした。至極真っ当なアプローチだ。
こうした展開にもシセ監督は、「(ボスニア戦で試した)3バックでやるとは言っていない。サッカーでシステムを変えることはよくあることだし、親善試合なので、他にも試したかった。合宿を始めてすぐの試合だから、満足している。選手にプレー時間を与えることもできた」と落ち着いて答えていた。
この試合における目的は、しっかりと果たせたのだろう。テストマッチでテストをした。至極真っ当なアプローチだ。
身体は重く、システムはチャレンジ。こうした試合だと、どうしても中心選手への依存度が強くなってしまう。だが、そうした状況でも違いを生み出すことができる選手が、この国にはいる。
特に圧巻だったのは、クリバリだ。プレーエリアの広さ、ボール奪取へのタイミングの確かさは、本当に素晴らしい。この試合でも、全ての競り合いで勝利し、ボールを持っても常に、相手守備の守りにくいところへの配球を狙っていた。本大会でも、絶対的な存在感を示すはずだ。
チームとしての攻撃ではミスが目立ったが、試合終了間際に見せた両サイドからの鋭いクロスボールの連続は迫力があった。
相手GKのファインセーブもあって得点こそ奪えなかったが、この時間帯は制空権を完全に握り、クロスをヘディングで折り返し、そこからシュートに持ち込んだり、クロスからのこぼれ球から2次攻撃を仕掛けたりと、得点の匂いを非常に感じさせた。
本大会には、万全のコンディションで臨んでくるはずだ。それだけに、マネを加えた攻撃陣が1試合を通して、こうした勢いのある攻撃を仕掛けてくることを想定して、日本は対策を練っておかなければならないだろう。
現地取材・文:中野 吉之伴
【著者プロフィール】
なかの・きちのすけ/1977年7月27日秋田生まれ。武蔵大学人文学部欧米文化学科卒業後、育成層指導のエキスパートになるためにドイツへ。地域に密着したアマチュアチームで様々なレベルのU-12からU-19チームで監督を歴任。2009年7月にドイツ・サッカー協会公認A級ライセンス獲得(UEFA−Aレベル)。SCフライブルクU-15チームで研修を積み、2016-17シーズンからドイツU-15・4部リーグ所属FCアウゲンで監督を務める。「ドイツ流タテの突破力」(池田書店)監修、「世界王者ドイツ年代別トレーニングの教科書」(カンゼン)執筆。最近は日本で「グラスルーツ指導者育成」「保護者や子供のサッカーとの向き合い方」「地域での相互ネットワーク構築」をテーマに、実際に現地に足を運んで様々な活動をしている。