後方の安定は攻撃に大胆な選択肢を許す。この日はコンディション調整に悩まされてきた青木亮太もキレのある動きを見せ、連敗への責任を一身に背負っていた長谷川アーリアジャスールらとともに気迫あふれるプレーを披露。ジョー、ガブリエル・シャビエル、和泉竜司らアタッキングサードの担い手たちも積極的に“デュエル”を仕掛け、攻撃に“迫力”という付加価値をもたらしていた。

　その陰には新井の「味方を行かせて自分はカバーというのが、守備の形として好き」という仕掛けがあったことは見逃せない。負傷明けで無理を利かせられない新井をカバーする意味でもこの日のホーシャはかなり前がかりの守備を展開しており、それが相手の攻撃の芽を摘み、課題であったリスク管理の一端を担うことになってもいる。そうして中盤での守備が活発化していけば、おのずと選手間の距離も縮まり、忘れかけていた持ち前のパスワークのリズムも復活。この日はシュートにまで至ることが少なかったが、中盤から後ろの攻守の循環は非常にスムーズだった。

　それだけに３本に終わったシュート数が何とも残念な状況と言えるのだが、つまり名古屋はようやく振り出しに戻ったということでもある。
 

　J２の常識が染みついたままにJ１の開幕を迎え、ある意味で“得体の知れない”チームを相手にしたG大阪、磐田とは互角以上に渡り合って勝利を得た。しかしその後にJ２での対戦経験がある湘南に足を引っかけられ、川崎には力負け。そして研究の進んだそれ以降の対戦では、ことごとく名古屋のサッカーを封じられ、逆手に取られて連敗を重ねた。

　８つもの敗戦を反面教師として出した一つの答えがC大阪に対して見せたパスサッカーと闘争心の融合だ。長谷川は勢い余って退場になってしまったが、２度目の警告は勝利への執念からくる遅延行為である。決して褒められたものではないが、名古屋の本気度を感じさせる一場面でもあった。ここまで来れば、次にやることは決まっている。