7年間の歩みがもたらした成長のかたち
経験とは、何をもたらすのか。それはゲームの流れを読み、必要な時に、必要な場所で、必要なプレーをすることであり、そのための準備を整えられることだ。
「トップ下」がフォーメーション上にないならば、試合の流れのなかで、そのポジションに行ける状況を作り出せればいいのだ。
昔と比べると、香川は中盤でのゲームメイクで焦ることが少なくなっている。相手の守り方を観察し、ボールを落ち着かせ、パスを回すことでチームにリズムをもたらす。それでいて、ここぞという場面ではしっかりと、得意のプレーができる。
スピードと勢いだけでは、互角以上の相手と戦うことはできない。チャンピオンズ・リーグのレアル・マドリー戦でも露呈してしまったように、ドルトムントには守備の安定と攻撃の構築に、まだ問題がある。
それだけに、特に攻撃面では、香川のようなボールを落ち着かせ、攻撃に変化をもたらせる選手が、今後も戦力として欠かせないのだ。
ふと、昔の取材記録を見直してみたら、2010年7月15日付の『ビルト』紙に香川のインタビューが載っているのを見つけた。日独サッカーの違いやドイツの第一印象は? というありきたりの質問が続くなか、最後に自身の座右の銘について口にしている。
「一生懸命、ハードに頑張った者だけが、さらに成長することができる」
当時から7年の月日が流れ過ぎた。今の香川は、彼のこれまでの頑張りがもたらした成長のかたちなのだ。様々な批判にさらされた時期にも、腐らずに前を向いて進んできた証。そしてその歩みは、これからも続いていくことだろう。
文:中野 吉之伴
【著者プロフィール】
なかの・きちのすけ/1977年7月27日秋田生まれ。武蔵大学人文学部欧米文化学科卒業後、育成層指導のエキスパートになるためにドイツへ。地域に密着したアマチュアチームで様々なレベルのU-12からU-19チームで監督を歴任。2009年7月にドイツ・サッカー協会公認A級ライセンス獲得(UEFA−Aレベル)。SCフライブルクU-15チームで研修を積み、2016-17シーズンからドイツU-15・4部リーグ所属FCアウゲンで監督を務める。「ドイツ流タテの突破力」(池田書店)監修、「世界王者ドイツ年代別トレーニングの教科書」(カンゼン)執筆。最近は日本で「グラスルーツ指導者育成」「保護者や子供のサッカーとの向き合い方」「地域での相互ネットワーク構築」をテーマに、実際に現地に足を運んで様々な活動をしている。
「トップ下」がフォーメーション上にないならば、試合の流れのなかで、そのポジションに行ける状況を作り出せればいいのだ。
昔と比べると、香川は中盤でのゲームメイクで焦ることが少なくなっている。相手の守り方を観察し、ボールを落ち着かせ、パスを回すことでチームにリズムをもたらす。それでいて、ここぞという場面ではしっかりと、得意のプレーができる。
スピードと勢いだけでは、互角以上の相手と戦うことはできない。チャンピオンズ・リーグのレアル・マドリー戦でも露呈してしまったように、ドルトムントには守備の安定と攻撃の構築に、まだ問題がある。
それだけに、特に攻撃面では、香川のようなボールを落ち着かせ、攻撃に変化をもたらせる選手が、今後も戦力として欠かせないのだ。
ふと、昔の取材記録を見直してみたら、2010年7月15日付の『ビルト』紙に香川のインタビューが載っているのを見つけた。日独サッカーの違いやドイツの第一印象は? というありきたりの質問が続くなか、最後に自身の座右の銘について口にしている。
「一生懸命、ハードに頑張った者だけが、さらに成長することができる」
当時から7年の月日が流れ過ぎた。今の香川は、彼のこれまでの頑張りがもたらした成長のかたちなのだ。様々な批判にさらされた時期にも、腐らずに前を向いて進んできた証。そしてその歩みは、これからも続いていくことだろう。
文:中野 吉之伴
【著者プロフィール】
なかの・きちのすけ/1977年7月27日秋田生まれ。武蔵大学人文学部欧米文化学科卒業後、育成層指導のエキスパートになるためにドイツへ。地域に密着したアマチュアチームで様々なレベルのU-12からU-19チームで監督を歴任。2009年7月にドイツ・サッカー協会公認A級ライセンス獲得(UEFA−Aレベル)。SCフライブルクU-15チームで研修を積み、2016-17シーズンからドイツU-15・4部リーグ所属FCアウゲンで監督を務める。「ドイツ流タテの突破力」(池田書店)監修、「世界王者ドイツ年代別トレーニングの教科書」(カンゼン)執筆。最近は日本で「グラスルーツ指導者育成」「保護者や子供のサッカーとの向き合い方」「地域での相互ネットワーク構築」をテーマに、実際に現地に足を運んで様々な活動をしている。