【秘話】豪快かつナイーブな点取り屋、川又堅碁をブレイクに導いた"あの時の決断”とは

カテゴリ:Jリーグ

飯尾篤史

2017年04月28日

大きな決断を下す。そしてブレイクへ。

岡山への移籍を決断すると前年の不振が嘘だったかのようにゴールを量産。忘れかけていた得点感覚を取り戻す(C)SOCCER DIGEST

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 だが、しばらくして川又は、新たな一歩を踏み出す決意を固める。
 
 挑戦をためらっていた川又の背中を押したのは、代理人だった。
 
「すごく煽られたんですよ。『目の前にボールがあったら、何も考えずに蹴り込むのがストライカーだろう。J2で点を取ってJ1に戻ればいいだけの話じゃないか』って」
 
 その言葉が川又のハートに火をつけた。
 
「そうだよな、何を弱気になっていたんだ、どのチームに行っても点を取れるのがFWじゃないかと。もともとそうした考え方が自分の原点だったし、結果を出せばなんの問題もない。この壁を乗り越えた時、もっと成長できるなって思えたので決めました」
 
 ここが、一番の勝負どころ――。
 
 覚悟を決めて、新天地へと旅立った。
 
―――◆―――◆―――
 
 DFを背負いながら身体を反転させ、左足を振り抜くと、鋭い弾道のボールがゴールネットに突き刺さった――。
 
 ずいぶんと時間が経った今でも川又は覚えている。ボールを捉えた足の感触も、身体全体から沸き立った喜びも。
 
 待望の瞬間は2012年4月1日、6節の徳島ヴォルティス戦で訪れた。1-1で迎えた82分、ペナルティエリア内でボールをキープし、無我夢中で放ったシュートがチームを勝利へと導いた。
 
「移籍してからのファーストゴールだったし、なによりもJ初ゴールだったんで、めちゃくちゃ嬉しかったですね。タイミング的にもちょうど良かった」
 
 サッカー人生を懸けて岡山にやって来た川又だったが、シーズンが開幕してすぐに肉離れを発症してしまう。ぬかるんだピッチに足を取られたことによる、事故のような負傷だった。
 
 この時、ツイていたのは、前年から在籍し、川又とポジションを争っていたFWチアゴの調子が芳しくなく、絶対的な存在になり得ていなかったことだろう。負傷が癒えた川又はすぐにチャンスを与えられ、5節のモンテディオ山形戦で途中出場して戦列に復帰する。初ゴールが生まれたのは、その翌節だったのだ。
 
 待望のリーグ初ゴールは、川又にふたつの恩恵をもたらした。
 
 ひとつは指揮官からの信頼である。
 
 この試合以降、川又はほとんどすべてのゲームに先発し、3-4-2-1システムの1トップに君臨する。
 
 もうひとつは、ゴール感覚である。
 
 7節の松本山雅戦で連続ゴールを決めると、9節のガイナーレ鳥取戦でもゴールネットを揺らし、まるで憑き物が落ちたかのように量産体制に入る。
 
 GKの逆を突くような冷静なシュートもあれば、豪快なダイビングヘッドもある。左足、右足、頭と、バリエーション豊かに積み上げたこのシーズンのゴール数は、実に18にのぼった。
 
 自身のゴール集の映像を眺めながら、川又が懐かしそうに言う。
 
「徳島戦のゴールで感覚が蘇ったというか、気持ちが楽になって、リラックスしてシュートを打てるようになった。シュートも全然、強く打ってない。当てただけっていう感覚。それにゴールが決まる時って落ち着いているんですよ。無の境地っていう感じ」
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