ハリルの今野再評価は功か罪か――歴代の指揮官を悩ますボランチの選択

カテゴリ:日本代表

加部 究

2017年03月29日

歴代の指揮官たちを悩ませてきたのは“攻守のバランス”。

中盤で長谷部が離脱したUAE戦、指揮官がG大阪から着想を得たというアンカー採用の戦術がフィット。今後の有効なオプションとなりそうだ。写真:小倉直樹(サッカーダイジェスト写真部)

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 最近の歴史を振り返っても、ボランチの選択は大きなテーマになっている。岡田、さらにアルベルト・ザッケローニ両監督は、長谷部と遠藤保仁で冒険を貫こうとしたが失敗。後任のハビエル・アギーレ監督は、守備能力に長けた細貝萌を攻撃面でも重用した。ボランチが1枚なのか2枚なのかの論議はさて置き、少なくとも国内で嘱望されるボランチは、国際基準に照らすと守備力が足りていない。
 
 例えば現在24~25歳になるプラチナ世代を率いてU-17ワールドカップを指揮した池内豊監督は、当時からこのバランスに悩み、柴崎岳を筆頭に攻撃的資質に傾いた選手をボランチに起用した。小林祐希がメンバーから外れたのも、チーム構成上で攻撃的なタレントに偏り過ぎているのが理由だった。
 
 日本のMFは、海の外へ渡った瞬間に評価、見解が分かれるケースが多い。長谷部や細貝はユーティリティ性を買われてサイドバックにも挑戦し、ヘーレンフェーンで小林は逆にポジションを下げた。アギーレ時代の柴崎の評価は、後ろにアンカーを置くことを前提としたインサイドハーフで、ハリルホジッチ監督は適性を探り切れずに躊躇っている。逆に今回新しく抜擢されたのが、海外に出て守備面での戦闘を身につけた高萩洋次郎だった。こうして絞り込んでいくと現状でアンカーを託せる人材は山口蛍ひとりになり、指揮官が次期候補を浮かべているとすれば、浦和ではセンターバックを務める遠藤航なのかもしれない。
 
 結局今野が再評価されたことで、ハリルホジッチ監督が在任中に、長谷部、山口も合わせた3人の名がリストから消えることはないだろう。しかし長谷部33歳、今野34歳、サッカーが年齢でするものではないとはいえ、この状況でブラジル・ワールドカップ以上の希望を見い出すのは難しい。そしてさらに怖いのは、ハリルホジッチ監督が去った後の未来だ。
 
取材・文:加部 究(スポーツライター)
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