50歳を迎えた永遠のサッカー少年。「いつか『職業:カズ』って書けるようになりたいね」

カテゴリ:Jリーグ

川原崇(サッカーダイジェストWeb編集部)

2017年02月27日

兄ヤスとの対談ではかつてない熱いトーンで。

2009年の貴重なツーショット。ヤス氏との対談トークでは、随所でインテリな一面も覗かせた。写真:佐藤明(サッカーダイジェスト写真部)

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 インタビューには三度同席させてもらった。いずれも鮮明に記憶している。
 
 最初は2004年の年末、ライバル誌であるサッカーマガジンとのダブルヘッダーだ。どちらも表紙撮影があったため、キングはスーツも靴もなにかもかも2セット用意してきた。プライベートで外出している際も「自分がどう見られているか」をつねに考えていると聞いていたが、どっちにどっちを着るべきかについて、真剣な面持ちで熟考していたのが印象的だった。
 
 二度目は、親友・北澤豪さんをインタビュアーに迎えての対談企画。恵比寿の高級中華料理店の一室を借りたところ、ボルサリーノでビシっと決めたキングとともに登場したのが、妻のりさ子さんだった。なんと円卓の隅っこに同席して、旧知の仲であるキーちゃんのトークに聞き入り、ふんふんと頷いていたのである。こちらはドギマギしっぱなし。いま思えば不思議な空間だったし、ほかの選手なら決してやらない(できない)。なにもかもが自然体だから、まったく嫌味がないのだ。
 
 そしてもっとも思い出深いのが、2009年の取材だ。実兄の三浦泰年氏が本誌で連載していた「素晴らしきかな サッカーヤロー」を単行本化する運びとなり、巻頭で兄弟対談をしたいと打診したところ、快く承諾してくれた。
 
 キングは兄のことを“ヤスさん”と呼んでいた。心底リスペクトしているからだろう。かつて聞いたことがない熱いトーンで、深く、鋭く、自身のサッカー観=人生観を掘り下げてくれた。
 
 驚きの事実がたくさんあった。世の中の流行りに精通し、他のJリーグの試合をチェック(とくに若手選手を)しているだけでなく、プレミアリーグやチャンピオンズ・リーグも日常的に観戦している。クラブマネジメントへの造詣が深く、時事的・社会的なトピックスに敏感で、対談ではインテリな一面も随所で覗かせた。すべては、フットボーラーとしての自己を深めるための糧なのだ。
 
 いちばん面白かったのが、こんな発言である。
 
「サッカーって絶対に極められないし、どれだけやっても答はないものだけど、サッカーは僕にとって自分が生きている証だから。今はまだ職業を書く前に『サッカー選手』って書いちゃう。いつかそこに『職業:カズ』って書けるようになりたいね(笑)」
 
 そして50歳となった今につながる名言を残して、ヤスさんとの対談を締めた。
 
「英国のジョージ・ベストは、おじいさんになってもずっと語り継がれた存在だったけど、それはサッカーをやめてからも、毎日目標を持って過ごしたからだと思うんだ。自分の過去にすがるだけではやっぱりダメで、過去を語れるのは、今をちゃんと生きているからだということを忘れてはいけない。だから僕はずっと、今を生き続けたいね」
 
 私はこの対談取材のテープレコーダーを、たまに無性に聴き返したくなる。
 
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