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【連載】小宮良之の『日本サッカー兵法書』其の九十四「勝利のための戦略、戦略のための戦術、戦術のための原則、そして…」

カテゴリ:連載・コラム

小宮良之

2016年10月26日

正しくミスを論じ、修正することで強いサッカーが更新される。

攻撃的なバルトラ。スポルティング戦での軽率なプレーの他、インゴルシュタット戦では無謀とも言える前線への攻撃参加の後に大ピンチを招いた。とはいえ、時にこれが好結果を生み出すこともあるから、サッカーは難しい。 (C) Getty Images

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 得点シーンを巻き戻そう。
 
 ガンバのMF、井手口陽介から縦パスが入った瞬間、横浜は左SBの金井貢史がインターセプトを狙い、一度はボールを奪ったが、井手口に奪い返される。ゴール前でスクランブルになりかけた時、今度は左CBのパク・ジョンスが奪い返しに後方から飛び出す。
 
 しかし、ボールはピンボールのように跳ね返ると、裏に出される格好となり、藤本に持ち込まれた。
 
 つまり、マリノスのディフェンダーは2度、禁を破っている。それによって、守備陣形は必然的に破綻していった。
 
 こうしたシーンは、世界のトップレベルでも見られる。
 
 チャンピオンズ・リーグのグループステージ第3節、スポルティング対ドルトムント。ドルトムントの左CB、マルク・バルトラは楔を受けた選手にチャレンジに行くも、奪い切れずに裏へ出され、さらに自分が空けたスペースにもう1人のアタッカーに侵入され、ピンチを招いた。
 
 同週のヨーロッパリーグでも、グループステージ第3節のサウサンプトン戦で、インテルのCB、ジェイソン・ムリージョが引っ張り出され、「留守を狙われた」。
 
 誰が悪いのか? という犯人捜しではない。局面ごとに、それぞれ戦術の応酬がある。それを研ぎ澄ましたものだけが、世界で勝ち抜ける。
 
 インターセプトは見栄えが良いし、カウンターの絶好機にもなり、成功したプレーは、賞賛されるべきだろう。
 
 しかしこの場合、「禁を破って試みている」という原則が必要になる。禁を破って失敗することは、敗北を意味しかねない。“頑張ったから”“懸命だったから”という見解からではなく、正しくミスを論じ、修正していくことによってのみ、強いサッカーが更新されるはずだ。
 
 現場において、向上の手がかりとなるのが戦術とも言える。そこには常に原則があり、それを守りながら応用し、時に破ることによっても成功を収める。その試行錯誤が戦略の一部分でもあって、全体のマネジメントに繋がるのだ。
 
文:小宮 良之
 
【著者プロフィール】
こみや・よしゆき/1972年、横浜市生まれ。大学在学中にスペインのサラマンカ大に留学。2001年にバルセロナへ渡りジャーナリストに。選手のみならず、サッカーに全てを注ぐ男の生き様を数多く描写する。『おれは最後に笑う』(東邦出版)など多数の書籍を出版しており、2016年2月にはヘスス・スアレス氏との共著『「戦術」への挑戦状 フットボールなで斬り論』(東邦出版)を上梓した。
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