異常かつ危険なインテルの「権力のねじれ」…後任監督人事でも意見が割れる

カテゴリ:ワールド

片野道郎

2016年10月25日

蘇寧グループもトヒルもプロサッカークラブ運営に関してはアマチュア。

10月23日のアタランタ戦を落としてインテルはセリエA3連敗。デブール監督の首が飛ぶのは時間の問題か。(C)Getty Images

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 問題は、監督人事がどのような結末を迎えるにしても、インテルが抱えている根本的な問題が解決するわけではないところだ。
 
 現在のインテルは、株式の70%強を保有するオーナーは蘇寧グループだが、経営上のトップはその蘇寧グループに株式を売却して遠からずインテルから手を引く見通しになっているにもかかわらず、現時点では会長の座に留まっているトヒルであるという、極めて不自然な“権力のねじれ”状態に置かれている。
 
 それだけでなく、蘇寧グループもトヒルもミラノから遠く離れたアジアに拠点を置いているため、ミラノで日々実際のクラブ運営に携わっている幹部たちは、意思決定の権限をまったく持たない、いわば中間管理職的な立場でしかない。意思決定権に裏付けされた権威を背景にして監督・チームに睨みを利かせるクラブ運営の実質的な最高責任者(通常はゼネラルディレクター)が存在していないのだ。
 
 さらに言えば、蘇寧グループもトヒルも、欧州トップレベルのプロサッカークラブ運営に関しては、経験も実績もないアマチュアでしかない。
 
 にもかかわらず、現場のマネジメントや中・長期的な強化戦略を司るクラブ運営のプロが不在だというのは、非常にアブノーマルかつ危険な状況だと言える。
 
 実際、今夏の補強やプレシーズン中に突如退任したロベルト・マンチーニの後任人事について、トヒルと蘇寧グループの間で強い影響力を発揮したのは、欧州、南米だけでなくアジアの移籍市場にも隠然たる勢力を持つ大物代理人のひとり、ジョーラブシャンだった。
 
 蘇寧グループがオーナーを務める中国スーパーリーグの江蘇蘇寧が、アレックス・ティシェイラとラミレスを獲得する際に仲介人として間に入ったのも、トヒルに取り入ってインテルにデブールを押し込んだのも、そして8月終わりにジョアン・マリオとガブリエウの獲得を手引きしたのも、すべてこの大物代理人だ。
 
 こうした状況の中でもしデブールを解任したとして、後任人事についての決断を下すのはいったい誰なのか、そしてその決断について責任を取るのは誰なのか(両者は一致しない可能性もある)。この2つのテーマは今後、インテルがどこに向かうのかを見極めるうえで、大きな指標になるだろう。
 
文:片野道郎
 
【著者プロフィール】
1962年生まれ、宮城県仙台市出身。1995年からイタリア北部のアレッサンドリアに在住し、翻訳家兼ジャーナリストとして精力的に活動中だ。カルチョを文化として捉え、その営みを巡ってのフィールドワークを継続発展させている。『ワールドサッカーダイジェスト』誌では現役監督とのコラボレーションによる戦術解説や選手分析が好評を博す。

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