オシムにあって、ハリルにないもの――それこそが今の代表を覆う不信感の正体だ

カテゴリ:日本代表

飯尾篤史

2016年10月24日

ハリルホジッチ監督に懐疑的な視線が向けられている要因のひとつは、チームの未来像がなかなか見えてこないことだ。

オシム監督は、”未来像の描かせ方”が抜群にうまかった。写真:小倉直樹(サッカーダイジェスト写真部)

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 就任当初から強調してきた「デュエル」や「縦に速い攻撃」を浸透させることが「第1フェーズ」なら、相手やシチュエーションに応じてメンバーと戦い方をガラリと変えていくのが「第2フェーズ」。そして「第3フェーズ」が、縦の速い攻撃と、これまでの強みだったショートパスによる連動した攻撃を90分の中で戦況に応じて使い分けられるようになること――なのではないか。
 
 現在、ハリルホジッチ監督に懐疑的な視線が向けられている要因のひとつは、この第3フェーズ、つまり、チームの未来像がなかなか見えてこないことだろう。
 
 この先、速攻と遅攻を高いレベルで併せ持ち、ワールドカップで勝てるしたたかなチームになるのか、それとも、ただ「守ってカウンター」のチームのままなのか……。
 
 指揮官の手腕を測りかねているのは、選手たちも同様だ。「練習では縦に速くしか言われない」「攻撃に関してはシンプルに縦を狙うことしかやっていない」といった声が漏れ伝わってくる。
 
 未来像の描かせ方という点で、抜群にうまかったのがイビチャ・オシム元監督だ。
 
 チーム作りの初期段階では、中村俊輔、遠藤保仁、中村憲剛の3人のプレーメーカーを同時に起用し、ボールをしっかりと保持して主導権を握れるチームを目指した。こうしてチームのベースが築かれると、今度は松井大輔や大久保嘉人ら仕掛けられるアタッカーを加え、チームを進化させていった。
 
「ヨーロッパでプレーする選手たちを頻繁に帰国させれば疲弊してしまうし、クラブでポジションを失ってしまう」と、欧州組の招集にも慎重で、国内組でチームのベースを築いていた。そうしたスタンスも好感が持てた理由だった。
 
 むろん、ハリルホジッチ監督にとって、欧州組の多くが所属クラブでこれほど試合に出られなくなることは、誤算以外の何物でもなかっただろう。加えて、試合2日前にならなければ招集選手全員が揃わないから戦術練習に割く時間もなかなか持てなかった。
 
 そこで、重要なのが11月11日のオマーン戦だ。
 
 久しぶりに迎える親善試合でハリルホジッチ監督はどんなメンバーをチョイスし、どのようなプランを練り、どういったテストを行なうのか。サウジアラビア戦に向けただけでなく、チームの未来像のヒントとなるものがそこにあるのかどうか、しっかりと見極めたい。
 
文:飯尾篤史(スポーツライター)
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